オモチャや食べ物などを並べて遊び、それらを描くことがいつしか僕のスタイルになった。手に取れる小さなものを並べ構成して、世界や物語が生み出されていくことが楽しい。
さらに最近では、他者を交えた予想不可能な関わりの中で作品が生まれる。この展示は他者との協働も含めた2つのシリーズで構成されている。
YOU ARE GOD
このシリーズは箱庭療法を引用しながら、まずは対象者に箱の中で砂を敷き、様々なオモチャを使って遊んでもらうことから作品制作が始まる。対象者が創り出す世界の物語を共有しながら、それらを僕自身が絵画に転換する。今までは子どもを対象者としてきたが、今回は保育士、元教師、医師、研究者、証券会社員、テレビディレクター、アイドル、ホームレスなど、これまでに出会った様々な肩書きの成人を
対象者とした。私たちがどのように世界を認識し、物語を紡ぐのか、それぞれが創った世界に光を当て、絵画作品に翻訳する。
像から像
ワークショップや日常的なあそびで子供や友人などと「絵しりとり」を行い、絵画作品にした新シリーズである。しりとりというシンプルな言語あそびではあるが、個々の言葉が繋がり、発展する過程は無限の可能性を秘めている。しりとりを絵画化するという特性上、ビジュアルとして表現できる単語のみで構成されていることが特徴で、さらに「死」にまつわる単語で終わるというルールを課している。複数の人と概念がリレーションされていくため、方向性を定めることも難しく、ループしたり派生したりと、コンポジションを含めアンコントローラブルな要素が多いのも、人と人が遊びの中でコミュニケーションしていく様を擬似模倣しているようである。この展覧会では、日常の中に潜む遊びの中から意識を掘り下げ、表現と協働の過程を通じて新たな世界を創造する試みがある。単なる遊戯に留まらず、自己と他者、言葉と物、現実と虚構といった関係性を紡ぎ出す行為へと思考する。
文:杉本克哉 編:谷川純平 訳:三宅 晋之輔