このイギリスのアート・シーンを支える重要な役割を担っている存在として、高い技術力と優れたアーティストを発掘しサポートする独特の活動で知られる版画工房パラゴン・プレスがあげられます。本展では、テリー・フロストをはじめとする戦後のブリティッシュ・アートを支えてきたアーティストから、アニッシュ・カプーア、ビル・ウッドロウら「ニュー・ブリティッシュ・スカルプチュア」の作家たち、そしてYBA世代、すなわちデミアン・ハースト、ジェイク&ディノス・チャップマン、サム・テイラー=ウッド、ギャリー・ヒュームらターナー賞受賞者や候補者になった気鋭のアーティストたちまで、現代イギリスを代表するアーティストたち25名がパラゴン・プレスと共に制作したプリント(版画)作品、約120点を展観します。さらに、本展のもうひとつの特徴は、彼らの多くがいわゆる版画家ではなく、画家や彫刻家、パフォーマンスや映像表現を用いるアーティストだということです。エッチングなどの伝統的な技法から最新のプリント技術を駆使したものまで、彼らがどのようにプリント(版画)という新たな制作手段に取り組んだのか、またそこから彼らはどのように新たな表現を獲得したのか、作品は私たちに多くの非常に興味深い問いを発します。
パラゴン・プレスとのコラボレーションを通して90年代後半以降に制作された作品から溢れる新鮮な魅力と、そこから生み出されるブリティッシュ・アートの新たなヴィジョンを存分に味わっていただけることでしょう。なお、本展はブリティッシュ・カウンシルの企画による国際巡回展の一環として、国内では2ヶ所のみ(西日本では当館のみ)で開催されるもので、ブリティッシュ・アートの「今」を一挙に見ることのできる貴重な機会です。ぜひお見逃しなく。