漫画家・手塚治虫(1928-1989)が『鉄腕アトム』のマンガ連載を開始したのは1952年のことでした。1963年には国産初の連続テレビアニメーションがスタート、さらに、1980年・2003年には新シリーズが放映されるなど、アトムは半世紀にもわたり人々の傍らに寄り添いながら生き続けてきました。
アトム誕生の時に立ち合った世代は、アトムを通して豊かな未来都市を空想しながら育ちました。そんなアトムファンたちは今、親となり、その子供たちに『鉄腕アトム』を語り継ぐ世代となりました。こうして、アトムは親から子へ、子から孫へと連綿と語り継がれて行くのかもしれません。
『鉄腕アトム』とほぼ同時期に描き始められた『火の鳥』は手塚治虫のライフワークともいわれる長編漫画で、人類普遍のテーマに真っ向から取り組んだ、そのストーリー展開は多くのファンを魅了しました。
今春にはTVアニメーションとしても放映されましたが、この物語もアトム同様、世代を超えて長く受け継がれてゆくことでしょう。
手塚治虫の作品は全部で700作品ともいわれています。その全ての作品の底に流れるものは“生命の尊さにたいする畏敬の念”といえるでしょう。
今回の展観では、『鉄腕アトム』と『火の鳥』の二つの作品の直筆原稿や原画などを展示し、登場人物を通して語られる手塚治虫の未来への伝言に耳を傾けてみようと思います。