加山又造(1927~2004)は、祖父は狩野派の絵師、父は西陣の染織図案家という京都の伝統的な家庭に生まれました。京都市立美術工芸学校絵画科を修了後、東京美術学校日本画科に進みました。卒業後は日本画家の山本丘人に師事し、革新的日本画家として戦後の日本画界に新風を送り続ける一方で、切金など絵画の古典技法の研究を深めました。同時に新しい日本画教育を目指す指導者としても大きな功績を残しました。1964年、若干37歳の若さで多摩美術大学日本画科に赴任し、学生達に熱心な指導を行いました。加山自身が兄のように慕っていた日本画の奇才・横山操(1920~1973)が翌年教授として同科へ招聘され、横山との交流の中で大いに充実した教師生活を送ったことを、加山自身、後年度々述懐しています。国内はもとより、中国や欧米などで国際的な展覧会を重ねながら、2003年秋には文化勲章を受章しましたが、2004年4月に惜しまれながら不帰の人となりました。
間もなく1周忌を迎える本年、多摩美術大学美術館では、ご遺族より多摩美術大学に寄贈された貴重な作品および制作資料の中から、『倣北宋水墨山水雪景』(1989年、4曲1隻 屏風)、素描59点、版画42点を公開いたします。本展には作品の制作過程を示すような未公開の素描や版画も数多く含まれ、さらに生前使用していた絵筆などの画材も展示する予定です。日本画家・加山又造の在りし日のアトリエでの息遣いを感じていただけることと思います。
またこれらの作品をもとに、本年4月から「加山又造研究会」(代表 本江邦夫教授)を発足させ、技法、素材、テーマなど様々な視点から、加山芸術の魅力についてあらためて検証を行う予定です。