当館は、日本の近現代美術の流れとその特徴を理解するための優れた作品を体系的に収集するという基本方針のもと、欧米とのかかわりの中での独自の展開に焦点をあてた作品収集と、目黒ゆかりの作家の作品収集を行ってきました。明治から戦前までについては、日本人作家の海外での習学期の作品、特に作家が自己のスタイルを模索する過程から生まれた新鮮な作品を、戦後については国際展に出品され高い評価を得た作品を中心に、同時代の新鮮な動きにも注目してきました。また、作家と作品へのより深い関心に応えることをめざして、制作のプロセスを示すものなど周辺の資料の収集にも力を入れてきました。
美術館の作品収集は、購入以外にも、所蔵家の方々や作家およびご遺族の方々からの寄贈や、作品との思いがけない出会いという幸運が契機となってなされる場合もあります。当館もまた、ほぼ毎年、多くの寄贈作品をコレクションに加えてきました。これらの寄贈は、開催した展覧会がきっかけとなったり、寄贈者が当館の調査や収集、教育普及の活動を評価してくださってのことですが、これは美術館として本当に喜ばしいことです。
こうして形づくられてきたコレクションは、作品や資料を端緒とした企画展や目黒ゆかりの作家展の中で活用、公開してきました。特に、開館以来毎年「所蔵作品展」を開催し、様々なテーマのもと公開してきました。
さて、今回で第19回目となる「所蔵作品展」ですが、今回は、これまでにさまざまな形で当館のコレクションにご協力いただきました多くの皆様に感謝の意を表するとともに、いずれの作品も、目黒区民をはじめすべての方々に、共有の文化財産として末永く大切に愛されることを願って開催したいと思います。これまでにご寄贈いただいた作品と近年あらたにコレクションに加わった作品を中心に、約70点を紹介する形で展示いたします。