コンピュータやインターネットを使って表現をすることが広く浸透したのはつい最近ですが、これまでも多くのアーティストたちが、写真や映像などのテクノロジーを利用して、時間や空間をこれまでとはまったく違うものとして体験できることに関心を持ち続けてきました。この展覧会では、戦後60年の間に日本のアーティストたちが試みてきたテクノロジーを使った実験の数々を振り返り、さらに国内のアーティストたちの近作も同時に展示しています。
これまで、キネティック・アート、実験映画、環境芸術、ヴィデオ・アート、アクティヴィズム、ライト・アートなど様々な呼称が与えられてきた一連の作品が、複数の潮流をたどりながら現在から未来へと向かっていることを概観できる貴重な機会になるでしょう。医学/分類学/工学などの科学が発達することで近代的な人間中心主義の時代が築かれてきましたが、すでに私たちは数々の過ちがおこなわれていることも知っています。アートはテクノロジーによって私たちがどのように世界とつながっているかを教えてくれるのではないでしょうか。
オートスライドプロジェクターによって映像と音の作品を1953年に制作した実験工房、コンピュータ・アートの記念碑的展覧会となった「サイバネティック・セレンディピティ」展(1968年、ICAロンドン)にAPM no.1(オートマティック・ペインティング・マシーン)を出品したCTG(コンピュータ・テクニック・グループ)、それと同じ頃にサイケデリックな色使いと自作シンセサイザーで一躍注目を集めたヨシダミノルなどの作品から、藤幡正樹、クワクボリョウタ、三上晴子+市川創太、江渡浩一郎、前林明次らの近作が展示されます。