2008年早春、永井荷風が世田谷文学館についに登場。
今を生きるあなたのために「役に立つ文学-荷風文学の活用法」をお届けします。
『ふらんす物語』『ぼく東綺譚』や日記『断腸亭日乗』などで知られる永井荷風は長い間、多くの愛読者に熱狂的に支持されてきました。また荷風は、作家や評論家たちによってさまざまな視点から論じられてきた特異な作家といえるでしょう。しかし荷風は、愛読者以外にとっては一般的に遠いひと、のイメージを越えることはなかなかできない存在でした。
そんな中、画期的な荷風論が2005年に登場しました。持田叙子氏の『朝寝の荷風』です。持田氏は、現代社会に生きる人々の共通点を多く持つ先駆者(しかも現代女性との共通点の多いこと!)としての荷風像を論じ、「荷風文学には、今を生きる人々にとっての多くのヒントがある」と提言しました。いまや居住地域に関係なく、都市的独身生活を満喫する人々。望むと望まざるとに関わらず、当たり前となった一人だけの老後を過ごす人々。荷風は、現代人が直面している「一人で生きていく」という人生の処世術を、作品として定時しています。荷風は今こそ読んで為になる作家であり、「文学なんて関係ない」と思う人や、荷風とは無縁に生きている現代女性たちの傍らにも、実は存在している作家なのです。
本展は、永井荷風と現代社会に生きる私たちが出会うべくして出会うための展覧会です。40年余りにわたって書き続けられた日記文学の傑作『断腸亭日乗』自筆稿本や、一人暮らしを支えた身の回りの品々、また、今回初公開となる小堀杏奴(森鴎外次女)あての書簡など多彩な資料を展示いたします。そのライフスタイルや作品をじかに体感し、シンプルライフのレッスンをはじめましょう!