メアリー・ブレア(1911年-1978年)は、米国オクラホマ州に生まれ、大学在学中に水彩画家としてそのキャリアをスタートさせました。その後、幾つかのアニメーションスタジオを経て1939年にウォルト・ディズニー社に入社しました。
そこでウォルト・ディズニーと出会い、彼女の才能が開花。「シンデレラ」(1950年)、「ふしぎの国のアリス」(1951年)、「ピーター・パン」(1953年)など、いくつもの作品のカラー・スタイリストとして、素晴らしい色彩感覚を生かした功績を残しました。アメリカでもまだ働く女性に厳しかったと言われる時代に、実に多くの作品に関わり、広く尊敬を集めたのです。フリーとなった後は、絵本の挿絵、舞台のデザインや広告のデザインなどを数多く残しました。さらに、ウォルト・ディズニーからの依頼でデザインした「イッツ・ア・スモールワールド」は、現在でもディズニーランドの人気アトラクションとして多くの人々に喜びを与えています。
大人と子供の目線がミックスされ、見る人に純粋な喜びを与える彼女のアートセンスは、独特な魅力に溢れており、当時のディズニー作品のみならず、現在も多くのアニメーション作家に影響を与え続けています。 彼女の作品は、2006年夏に東京都現代美術館で開催された「ディズニ-・アート展」で初めてその一部が紹介されました。その際、もっと作品が見たいという声が数多く寄せられました。それに応える形で、今回ご親族やウォルト・ディズニー・アニメーション・リサーチライブラリーをはじめとするたくさんのご協力を得て、たった一度だけ、彼女の人生を巡る展覧会としてご紹介できることとなりました。
本展は、スタジオジブリ、及び三鷹の森ジブリ美術館の全面的な協力のもと、アニメーション映画におけるカラー・スタイリストという、これまでにない視点でお送りする初めての展覧会です。本来は資料として保管され、アメリカ国外を出ることはめったにない貴重なディズニー初期アニメーションにおけるアート作品や、ディズニーランドのアトラクションデザイン作品を中心に、大規模に一般公開するものです。展覧会では2500点を越える膨大な作品群から精選した約500点の作品に加え、彼女の生涯を様々な写真、愛用品、映像を通して時代の流れと共に分かりやすく展示します。
ウォルトが信じたひとりの女性—。アメリカに生きた、奇跡とも言える彼女の才能にどうぞ触れてみて下さい。この夏、皆さんにとってきっと忘れられない体験になります。