19世紀の絵画に革新をもたらしたピサロ、セザンヌ、シスレー、モネ、ルノワールら印象派の画家たち。きらめく光と色彩を自由な感性とらえた彼らの作品は、現在も多くの人々を魅了しています。
1870年代初頭、アカデミズムに対抗するモネやルノワール、ピサロ、セザンヌらは、ともに制作を行いながら、新しい絵画を模索していきます。モネが暮らすパリ近郊のアルジャルトゥイユには、マネやルノワールなど多くの画家たちが来訪しました。自由な筆致で自然を捉えたルノワール《アンジャントゥイユ橋》はモネと画架を並べて描いたと言われています。セザンヌ《ウルビノ壺のある静物》は、オーヴェール・シュル・オワーズで、ピサロの助言のもと制作した作品です。
1874年、彼らは最初のグループ展、いわゆる印象派展を開催します。「印象派」という呼び名は、批評家ルイ・ルロワがこの出品作を嘲笑的に批評したことに始まると言われています。しかし、第3回のグループ展からは自らを「印象派」を呼び観衆からの評価も次第に高まっていきました。1886年の第8回展にはスーラやシニャックら新しい世代の画家たちも加わり、ピサロはその影響を色濃く反映した点描風の《エラニーの牧場》を出品しました。この第8回展を最後に印象派としての12年間の活動に幕を下ろしますが、彼らはその後もそれぞれの個性にもとづく独自の展開を見せました。モネは《ジヴェルニー付近のセーヌ川》など連作を通じて、移ろう光を徹底的に追求し、ルノワールは伝統絵画に学んで艶やかな色調を獲得、セザンヌは印象派の世界から古典絵画のような堅固で永続的なものを創り出したいと模索します。彼らの探求は、ゴーガン、ゴッホやマティスなど後世にまで大きな影響を与えました。本展では、絵画芸術を伝統から革新へと導いた印象派とその影響を紹介します。