徳川美術館は、江戸時代には御三家の一つで、その筆頭であった尾張徳川家に伝えられた、いわゆる大名道具を展示公開している美術館で、昭和10年(1935)に開館しました。収蔵品は、「駿府御分物」と呼ばれる、徳川家康の遺品を中核として、歴代藩主や夫人たちの蒐集品、婚礼の際の持参品などで、その数一万数千件にも及んでいます。これらの中には、室町将軍家を始め織田信長、豊臣秀吉ゆかりの品々も多く含まれています。さらに徳川将軍家(宗家)や紀伊徳川家、一橋徳川家、阿波徳島の蜂須賀家などの大大名家から売立てられた重宝類の一部も購入し、名古屋の豪商であった岡谷家をはじめいくつかの篤志家の寄贈品を加え、充実した内容の収蔵品を誇っています。一方、蓬左文庫は、尾張徳川家の旧蔵書を中心に優れた和漢の古典籍を所蔵する公開文庫で、同じく昭和10年に、東京の徳川家邸内に開館しました。昭和25年からは、現在地に移り、名古屋市によって運営されています。徳川家康の遺品として譲られた「駿河御譲本」を核として初代藩主義直が創設した尾張藩御文庫の蔵書を受け継いでいます。本年は、徳川美術館と蓬左文庫が開館して75周年を迎えます。徳川家康の命で名古屋が開府して400年にもあたります。この記念すべき年にあたり、江戸時代にかつて尾張徳川家に所蔵されていた作品、あるいは明治時代以降、売り立てられたり贈与された作品も併せ、尾張徳川家伝来の名品優品を一挙に公開します。