当館の特色のひとつである琳派コレクションは、絵画・陶器・漆工品などの幅広い分野にわたり、所蔵品にひときわ彩りをそえています。
江戸時代の装飾芸術の流派である琳派は、伝統的な狩野派や土佐派のような家系を中心とした継承ではなく、作風に対する共感等、私淑によって継承されました。江戸初期の本阿弥光悦・俵屋宗達から元禄(1688-1704)頃の尾形光琳・乾山へと継承され、その100年程後、文化・文政期(1804-1830)に酒井抱一が光琳に傾倒し、その芸術の再興を志しました。
光悦は書、陶芸、漆芸、茶の湯など様々な分野にわたり時代をリードするアートディレクターでした。その光悦が、「俵屋」という工房を営み扇絵等を制作していた宗達を見出し、宗達の金銀泥下絵に筆を揮った和歌巻を制作するなど平安時代の優雅な王朝美を復活させました。光琳は宗達に私淑し、大胆で軽妙な独自の画風を築き上げ、琳派を大成させました。光琳の制作は屏風絵、団扇、小袖、蒔絵など多岐にわたっています。また光琳の実弟・乾山は京焼の名工・野々村仁清より陶法を伝授され、京都・鳴滝泉谷に窯を築き、光琳が絵付けしたものに画賛をするなど、雅趣に満ちた作品を制作しました。抱一は、色彩豊かな光琳画の装飾性に倣いながらも、繊細優美な画風をもって豊かな叙情性を追究しました。
本展では、本阿弥光悦筆、俵屋宗達下絵「鹿下絵新古今集和歌巻」や尾形光琳筆「秋好中宮図」をはじめとする所蔵の琳派作品を展示し、今だ人々を魅了してやまない琳派の世界の一端をご紹介します。