ミュージアムに新たに加わったコレクションの一端を披露する本展。昨年は珍しく開かれなかったため、今回は2年ぶんの収蔵品の中から、特に注目される作品・資料が厳選されました。
展覧会は5章立てで、第1章「江戸の名所 亀戸梅屋敷」から。亀戸梅屋敷は、江戸の梅見の名所で、1910年(明治43)の水害で閉園するまで、多くの人々に親しまれました。
歴代、梅園を管理していた安藤氏のご子孫から、梅屋敷の看板や江戸城出入りの鑑札など、貴重な資料が寄贈されました。
ミュージアムのコレクションを形成する上で、購入と同じくらい大切なのが、寄贈。江戸東京博物館にも、毎年、数多くの品々が寄贈されています。
大河ドラマで有名な天璋院篤姫に仕えた女性の父が書いた日記にも注目。篤姫の幼名は、ドラマでは「かつ」と呼ばれていましたが、「いち」である事が分かりました。
第2章は「江戸の粋を描く 絵師たちの競演」。ここのイチオシは、幕末から明治にかけて活躍した蒔絵師・柴田是真の下絵コレクションです。本画にもひけをとらない下絵や手控え類は、近年、人気を集めている是真の研究を大きく進めそうです。
歌川国芳、三代歌川豊国らの作品も展示されています。
第3章は「ひろがる東京」。明治維新で、日本の首都になった東京。近代的な街並みに改造が進むのは、20世紀に入った頃からです。
中央停車場と呼ばれていた東京駅が建設されたのも、この頃です。建設中の写真も展示されています。
日本工房による「NIPPON」は、海外に向けて日本を宣伝するグラフ誌です。国策としての意図が強く反映されていますが、デザイン的なクオリティの高さは折り紙付きです。
第4章は「『会水庵』ゆかりの茶器と近代の生活文化」。会水庵は、大正から昭和にかけて活動した茶人・山岸会水が建てた茶室です。展示されている自作の茶碗や書画などは、山岸会水の弟子筋の方から寄贈されました。
あわせて、働く女性の資料も。可愛らしいミニチュア衣類は、裁縫学校で学び、後に裁縫教師になった女性が作った、練習用の服です。
第5章は「風船爆弾工場の女学生たち」。太平洋戦争末期に開発され、偏西風に乗せた風船で米国本土を攻撃するというトンデモ兵器ですが、米国は化学兵器の搭載を恐れていたと言われます。
寄贈されたのは、製造のために動員された女学生の寄せ書き。東京宝塚劇場が製造工場になっていました。
この章では、戦時資料や、戦後の占領期や東京オリンピックに関する資料も展示されています。
最後に、トリビア的なお話を。江戸博は東京都の博物館ですが、寄贈者は必ずしも都民に限りません。ご先祖が東京に縁があった、などで、寄贈元は全国各地。大切に守り伝えてきた方々の意図も踏まえながら、博物館として保存・活用を進めています。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年3月18日 ]