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    レポート
    ラファエル前派の軌跡 展
    三菱一号館美術館 | 東京都
    今も響く、ラスキンのメッセージ
    美術学校の同級生だったロセッティ、ミレイ、ハントが中心になり、1948年に結成されたラファエル前派同盟。若い彼らを理論的に支えたのが、同時代の批評家ジョン・ラスキンでした。ラファエル前派を中心に、ヴィクトリア朝の英国美術を俯瞰する展覧会が、三菱一号館美術館で開催中です。
    (左から)ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ《祝福されし乙女》1875-81年 リヴァプール国立美術館、レディ・リーヴァー・アート・ギャラリー / ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ《ウェヌス・ウェルティコルディア(魔性のヴィーナス)》1863-68年頃 ラッセル=コーツ美術館
    (左から時計回りで)フォード・マドクス・ブラウン《トリストラム卿の死》1864年 バーミンガム美術館 / フォード・マドクス・ブラウン《ウィンダミア》1848-55年 リヴァプール国立美術館、レディ・リーヴァー・アート・ギャラリー / フォード・マドクス・ブラウン《待ちわびて ─ 1854-55年イギリスの冬の炉端》1851-52年/1854-55年 リヴァプール国立美術館、ウォーカー・アート・ギャラリー
    (左から)アーサー・ヒューズ《音楽会》1861-64年 リヴァプール国立美術館、レディ・リーヴァー・アート・ギャラリー / アーサー・ヒューズ《ブラッケン・ディーンのクリスマス・キャロル ─ ジェイムズ・リサート家》1878-79年 バーミンガム美術館
    (左から)アルフレッド・ウィリアム・ハント《コーネル・ロス ─ 春》1857年 / ジョン・ウィリアム・インチボルト《アーサー王の島》1862年
    (左から)ジョージ・フレデリック・ワッツ《エンディミオン》1868-73年頃 / ジョージ・フレデリック・ワッツ《オルペウスとエウリュディケー》1870年頃
    (左から)ウィリアム・ダイス《初めて彩色を試みる少年ティッツァーノ》1856-57年 アバディーン美術館 / トマス・マシューズ・ルック《アハブ王の所有欲》1879年頃 ラッセル=コーツ美術館
    (左から)エドワード・バーン=ジョーンズ《三美神》1885-96年頃 タリー・ハウス美術館 / エドワード・バーン=ジョーンズ《赦しの樹》1881-82年 リヴァプール国立美術館、レディ・リーヴァー・アート・ギャラリー
    (左から)モリス・マーシャル・フォークナー商会(1875年以降はモリス商会)《格子垣(壁紙)》1862年(デザイン) デザイン:ウィリアム・モリス ウィリアム・モリスギャラリー / (椅子3点)モリス・マーシャル・フォークナー商会(1875年以降はモリス商会)《サセックス・チェア》(左から)1865年、1863年頃、1865年頃 大阪中之島美術館
    第5章「ウィリアム・モリスと装飾芸術」 (壁3点)モリス・マーシャル・フォークナー商会(1875年以降はモリス商会)《ウィリアム・モリスとモリス商会による装飾用織物》(左奥から)スイカズラ、イチゴ泥棒、孔雀と竜

    ジョン・ラスキン生誕200年を記念した本展。ラファエル前派だけでなく、周辺も含めて紹介していきます。


    第1章は「ターナーとラスキン」。英国絵画史に燦然と輝く風景画家の、J.M.W.ターナー。ただ、1840年前後からの荒々しい表現は、強く非難されていました。


    若き批評家ラスキンは、ターナーの先駆的な表現をいち早く評価しました。1843年に「現代画家論」(Modern Painters)第一巻を発表、一躍その名を世に知らしめました。


    ラスキンは自身も絵画のレッスンを受けています。第1章には、ラスキンによる水彩や素描も並びます。


    第2章は「ラファエル前派同盟」。ロイヤル・アカデミーの保守性を批判して結成された、ラファエル前派同盟。感傷的な描き方を否定し、中世美術のように分かりやすく、誠実な表現を目指しました。


    若い彼らの行動を理解する人は多くありませんでしたが、ラスキンは力強く擁護。ミレイやロセッティらとの交流を深めていきます。


    展覧会の中心といえるのが、この章です。メインビジュアルのロセッティ《ウェヌス・ウェルティコルディア(魔性のヴィーナス)》も含めて、大きな展示室は撮影可能です。



    第3章は「ラファエル前派周縁」。綿密な自然観察、主題の誠実な描写など、ラファエル前派の思想は、1850年代初頭には広く受け入れられるようになりました。


    年長のウィリアム・ダイスらも、同種の画家と見なされるようになりました。確かに、細やかな自然描写などはラファエル前派に通じます。


    他方で、フレデリック・レイトンやジョージ・フレデリック・ワッツらは、古代ギリシア・ローマ美術を再評価した絵画を制作。その枠組みは広がっていきました。


    第4章は「バーン=ジョーンズ」。やや年少のエドワード・バーン=ジョーンズは、ラファエル前派第二世代の画家です。


    ラスキンの芸術論や建築論に心酔したバーン=ジョーンズは、ロセッティに弟子入り。世俗的な現実と乖離した作品で、19世紀末の英国で最も称賛された画家になりました。


    第5章は「ウィリアム・モリスと装飾芸術」。バーン=ジョーンズの盟友、ウィリアム・モリスも、ラファエル前派第二世代です。


    1861年に、あらゆる種類の装飾芸術を扱う「モリス・マーシャル・フォークナー商会」を設立(1875年に単独経営の「モリス商会」に改組)。「生活と芸術との一致」を目指しました。


    モリスの行動は、後に「アーツ・アンド・クラフツ運動」に発展。その考えは、今日の「デザイン」にも繋がっています。


    「全ての人が満ち足りた生活を送るべき」と説いたラスキン。150年前のメッセージですが、今の私たちにも強く響きます。


    展覧会は、三菱一号館美術館からスタートした巡回展。東京展の後は、久留米市美術館(6/20-9/8)、あべのハルカス美術館(10/5-12/15)に巡回します。


    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年3月13日 ]


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    時空旅人(編)

    三栄書房
    ¥ 907

    料金一般当日:1,700円
     → チケットのお求めはお出かけ前にicon

    会場
    会期
    2019年3月14日(木)~6月9日(日)
    会期終了
    開館時間
    10時~18時 / 金(祝日を除く)のみ10時~20時
    ※10/5より開館時間が変更になりました。
    ※いずれも最終入館は閉館30分前まで
    休館日
    月曜日(ただし、6月3日と、トークフリーデーの3月25日、5月27日は開館)
    住所
    東京都千代田区丸の内2-6-2
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト http://mimt.jp/ppr
    料金
    一般 1,700円 / 高校・大学生 1,000円 / 小・中学生 無料

    【アフター5女子割】 第2水曜日17時以降
    当日券一般(女性のみ) 1,000円

    ※他の割引と併用不可
    ※利用の際は「女子割」での当日券ご購入の旨をお申し出ください。
    展覧会詳細 ラファエル前派の軌跡 展 詳細情報
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