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    レポート
    宮川香山 眞葛ミュージアム 新収蔵品展

    横浜東口のポートサイド地区は、アート&デザインの町としても開発された一帯です。商業施設が並ぶ高層ビルの一角に宮川香山 眞葛ミュージアムは存在します。



    宮川香山 眞葛ミュージアム概観 写真:宮川香山 眞葛ミュージアム蔵


    宮川香山は超絶技巧で知られる陶芸家です。明治初期、海外の万国博覧会で輝かしい受賞歴を残しました。日本よりも海外で人気を博しています。輸出品の制作が中心だったため、国内にはほとんど残らずコレクターによって買い戻されました。

    館内はこじんまりとしていますが、香山のエッセンスが凝縮され濃密な展示空間です。香山の作風は時代に合わせ変化を遂げました。それと同様、展示室もテーマごとに工夫され、変化に富み楽しませくれます。



    展示風景 受賞歴や作風の変化を年代順に展示 写真:宮川香山 眞葛ミュージアム蔵


    歴史的資料やQRコードを利用した解説翻訳もあります。その隣には格子越しの和室展示室。小上がりが設えられ、畳敷きの中、座位で鑑賞ができるのは粋なはからいです。乾山の写しや香山が描いた軸が展示されています。



    和室展示室


    最後の展示室は、圧倒的な歴代香山の作品が迫ります。国内外からの新収蔵作品はこちらに展示。(★で表示)



    展示風景


    香山が駆け抜けた時代を凝縮しぎゅっと閉じ込めた作品の数々。山本博士館長に代表的な技法のおすすめ作品をご紹介いただきました。


    高浮彫

    香山の代表的な初期の技法「高浮彫」は、器に動植物を精緻な細工で表現。大迫力の鷹、緻密な雛、彫刻のような技に圧倒されます。


    崖ニ鷹大花瓶 一対の内 《山本博士蔵》


    かつて同様の花瓶が、ニューヨークの鉄道王の豪邸で、飾られている様子が古書の中で確認されました。香山が世界でどのように受容されていたかが窺えます。

    鷹の羽根は幾重にも重ねられ細やかです。しかし粘土が厚くなり重くなってバランスを崩すため内側からえぐられ、見えない部分にも技巧が隠れています。



    崖ニ鷹大花瓶 一対の内 部分 《山本博士蔵》 写真:宮川香山 眞葛ミュージアム蔵


    釉下彩

    時代のニーズが変化すると作風もがらりと変わります。絵付けしたあと透明釉をかけ、繊細なグラデーションで表現した釉下彩です。モチーフや形は、当時人気のアール・ヌーヴォーの影響がうかがえます。器の形とモチーフの形状は重なりあっています。



    釉下彩黄釉菖蒲大花瓶 《山本博士蔵》 


    新収蔵品

    フロリダからアメリカのオークションを経てやってきました。金泥や金粉を施した華やかな猫の香炉です。



    招福金彩猫撮香炉《山本博士蔵》


    見る方向によって表情が変化し、右斜め上からが館長おすすめの角度です。



    招福金彩猫撮香炉 《山本博士蔵》 写真:宮川香山 眞葛ミュージアム蔵


    遺作

    亡くなる直前に制作。翡翠色の琅玕釉が花瓶全体を包みます。光と影で表情を変える濃緑色が作る景色に吸い込まれそうです。蟹は釉下彩の透明釉に覆われ、初期とはまた違う静謐さを感じました。



    琅玕釉蟹付花瓶《山本博士蔵》


    花瓶内は瑠璃釉で水が満たされたようで、香山の美の到達点を感じさせます。



    琅玕釉蟹付花瓶 一部 《山本博士蔵》 写真:宮川香山 眞葛ミュージアム蔵


    没後、二代香山の言葉。「故人は西洋向けのけばけばしいものより、日本向けの沈んだ雅致に富んだものの方が得手のようでした」

    蟹は香山自身でしょうか?花瓶をよじ登ってなお、そこから見える深淵な水底の世界を眺めているようです。この美術館には超絶技巧の中に隠れた「静けさ」香山が元来、好んだ作風を兼ね備えた作品が多く集められているように感じました。


    [ 取材・撮影・文:コロコロ / 2022年2月18日 ]


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