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    塔本シスコ展 シスコ・パラダイス かかずにはいられない!人生絵日記
    滋賀県立美術館 | 滋賀県

    今日はとても楽しみにしていた、滋賀県立美術館での《塔本シスコ展 シスコ・パラダイス》に行ってきました。



    滋賀県立美術館で巡回展開催


    巡回展の告知を見て大体は想像していましたが実物を観て私の頭は戸惑っていました。1枚の絵に、シスコさんの全人生の思い出が重なり、隙間を埋めているのです。山里の記憶は九州熊本と大阪枚方の風景が重なり、子供のシスコさんから大人のシスコさんまでが一緒に顔を出しているのです。

    時空を超えた一元化みたいです。シスコさんって凄い! 



    『造幣局の桜』1987年


    『ふるさとの海』は夏の不知火海の風景。ムツゴロウや魚、カニ、そして子供たちが大きな一面を作り上げています。この絵の裏側には“文字”で思い出がいっぱい書かれています。まさに夏休みの宿題絵日記のようです。このようにシスコさんの作品にはタイトルやコメントが簡潔な言葉で多く書き込まれ、感動の内容が読み取れます。裏側や額装の横の部分にも、そして表裏両面が絵画のものもあります。



    『ふるさとの海』1992年



    『ミーチャン トウガンヲ ミテ ビックリよ』2002年


    シスコさんのアトリエ兼居室は枚方の団地の一室、四畳半。高いところには届きませんのでぐるぐる回して描いたそうです。だから1枚の絵で方向がバラバラ!風景が逆さまのものもあり、観る側も首を回して鑑賞します。

    キャンバスも十分あったとはいえず、多くの作品が“段ボール”に描かれていることに驚きました。軽くてたくさん手に入る、シスコさんには格好のキャンバスです。絵画だけではなく、手作り人形や着物、ビンの装飾など周りにあるものがどんどんシスコ・パラダイスになってゆきました。



    シスコの日本人形 1994年頃


    シスコさんには女神がいます。何やら土偶や埴輪を思わせるような造形のものや精霊のようなものが立体物や絵画にも描き込まれています。金魚、さかな、鳥、蝶、ひまわり、コスモスなど自然と大の仲良しのシスコさんはモデルには困りません。どれも複数団体で登場し、好きなものがたくさん集まってくるのです。もしかして淋しがりやさんでしょうか?・・ 



    『秋の庭』1993年(右奥)、『野しょうぶとつばめ』1984年(手前)



    『ひまわりの中でインコ』1987年


    そして大切な一番の友達は猫のミーイちゃん。おめめパッチリですが「ヒルネテル」でいいんです。背景の暗色と輝きのある輪郭色でとても立体感ある作品です。



    『ヒルネテル ミーです』2001年


    シスコさんはニュースにも敏感でした。画中画のようにTV画面が書き込まれるものもあり、長野オリンピックや万博、そして丸山明宏さんも登場。とにかく日々楽しかった出来事が絵日記になりました。

    『絵を描く私』は80歳での作品ですが、大きな口を開けて唄う鳥や明るい花に囲まれた自画像です。1993年5月5日の天皇陛下「結婚の儀」祝賀パレードを祝っているのです。 



    『絵を描く私』1993年 


    塔本シスコさんは様々な人生の浮き沈みを経験されましたが、養父が夢見たサンフランシスコに因んだ“シスコ”・・素敵な名前です。多くの経験や思いは、ある日シスコさんの絵筆を通して素晴らしい絵画作品を次々と生み出すことになりました。展覧会をとても楽しみにしていた理由は、私はシスコさんのとても近くに今も住んでいて題材となっている長尾や山田池なども知っているからです。

    今回の企画展巡回はシスコさんの素晴らしさを紹介したいという各地の学芸員さんたちの熱いリレーで開催されたと伺いました。ラストを飾る滋賀では独自に5作品を追加したラインナップになっています。91歳の生涯を1冊の分厚い絵日記に綴り続けたシスコさんを知ることができてとても嬉しく思います。パラダイスをそっと覗かせていただいた気分です。


    滋賀県立美術館はJR瀬田駅から路線バスで10分程度の文化ゾーンと言われるエリアにありました。解放感あるロビーなど静かな緑の中でアートを楽しめます。小倉遊亀コレクションなどを紹介する専用ブースもあり、ミュージアムショップやティータイムと共に満喫するには時間が必要です。ゆとりを持ってのお出かけをお勧めします。



    大好きな花の絵の展示風景



    ミュージアムショップとコーヒータイム

    [ 取材・撮影・文:ひろりん / 2022年7月12日 ]


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    会場
    滋賀県立美術館
    会期
    2022年7月9日(土)〜9月4日(日)
    会期終了
    開館時間
    月曜日(祝日の場合は開館、翌日休館)、
    年末年始
    休館日
    月曜日(祝日の場合は開館、翌日休館)、
    年末年始、展示入替期間
    住所
    〒520-2122 滋賀県大津市瀬田南大萱町1740-1(文化ゾーン内)
    電話 077-543-2111
    展覧会詳細 塔本シスコ展 シスコ・パラダイス かかずにはいられない!人生絵日記 詳細情報
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