1964年から絵本作家の登竜門としてイタリア・ボローニャで開催されている「絵本原画コンクール」には、世界中から5点1組のイラストが集まります。
西宮市大谷記念美術館では、1978年よりこのコンクールの入選作品を毎年恒例の展覧会として開催しており、わたしは、20年以上この時期を楽しみに通い続けています。 さて、今年はどんな作品に出会えるでしょうか?

西宮市大谷記念美術館 エントランス
今年は、89ヵ国・地域から過去最多の4,374組の応募があり、その中から入選を果たした日本人6名を含む29ヵ国・地域の76組の全作品を見ることができます。
EXPO2025 YEARでもあり、多彩な国と地域を確かめながら、多様なテーマや技法の作品を見ていると、さながら万博のパビリオンを巡っているような感覚になりました。

展示室風景

マリア・ヘスス・グアルダ、カリーナ・レテリエル(チリ)《子どもたちには権利がある!》

木村友美(日本)《きっと世界のどこにでも起こっている物語》

アンドレア・エスピエル(スペイン)《ちいさなぼくらは》
5枚の絵に添えられたひとことが秀逸です。順番に、1.耳を澄ます、2.息をする、3.待つ、4.分かち合う、5.やり直すです。

ロシーオ・カッツ(アルゼンチン)《泳ぐ》
ショーケースに収まるこの作品の原題は《My Blue》。一見すると版画にも見えるのですが、 布を貼り合わせた刺繍を施して作られています。しみじみ “Blue”の意味が沁みてきます。

シャオ・リミ(中国)《フランクとさかな》
最終コーナーに本作品の絵本があります。手に取って疾走感と生活感を味わってください。

イシタ・ジェイン(インド)《真夜中のバイク》
そして、今回、最もお気に入りの作品はこちらです。伊藤若冲さんに見ていただきたいなぁ~
絵には「毎朝ぼくは、おんどりやめんどりのために朝ごはんをつくる。」と添えられていて、 よく見ると、その朝ごはんは目玉焼き!

続いて、世界三大絵本賞といわれる「国際アンデルセン賞」はじめ数々の受賞歴を誇るシドニー・スミス(カナダ)の特別展示コーナーは見逃すことができません。
シドニーが描きおろした本展カタログ表紙の原画に加え、作家のアイディアが詰まったスケッチやそれらをもとにした原画が展示され、奥のコーナーに進むと絵本作品を手にすることができるという流れです。 シドニーの絵本は、文字を読まずとも絵が雄弁に語り、ストレートに心に響きます。

シドニー・スミス(カナダ)「2025ボローニャ国際絵本原画展 カタログ表紙のためのイラスト

シドニー・スミス(カナダ)《あらしの島で》 スケッチ・習作

シドニー・スミス(カナダ)《あらしの島で》 絵本原画
「イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」にお出かけください。
お気に入りの絵が見つかるひとときに、束の間の涼と安らぎを感じると思います。
[取材・撮影・文:hacoiri / 2025年8月28日]