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    レポート
    神田日勝 大地への筆触
    東京ステーションギャラリー | 東京都
    「農民画家」に非ず
    北海道で農業を続けながら、ひとり絵を描き続けた神田日勝(1937-1970)。32歳で亡くなってから、今年でちょうど50年となります。東京で42年ぶりとなる大規模個展が、東京ステーションギャラリーではじまります。
    神田日勝《馬(絶筆・未完)》1970年 神田日勝記念美術館
    (中央)神田日勝《板・足・頭》1963年 北海道立近代美術館
    (中央)神田日勝《自画像》1964年頃 神田日勝記念美術館
    3階 展示室
    神田日勝《馬》1965年 神田日勝記念美術館
    2階 展示室
    (左)神田日勝《画室 E》1967年 帯広市教育委員会(北海道立帯広美術館寄託)
    (左奥)神田日勝《室内風景》1970年 北海道立近代美術館 / (右手前)神田日勝《ヘイと人》1969年 個人蔵(神田日勝記念美術館寄託)
    (左奥)神田日勝《人間 B》1969年 神田日勝記念美術館 / (右手前)神田日勝《晴れた日の風景》1968年 神田日勝記念美術館

    昨年の朝ドラ(NHK朝の連続テレビ小説)「なつぞら」では、神田日勝をモチーフにした山田天陽が登場。吉沢亮さんの熱演もあり、亡くなった時にはSNS上で「天陽ロス」が巻き起こりました。


    今回の展覧会は「プロローグ」「壁と人」「牛馬を見つめる」「画室/室内風景」「アンフォルメルの試み」「十勝の風景」「エピローグ ― 半身の馬」という構成。ほぼ年代順で、歩みを振り返ります。


    実際の神田日勝は、1937(昭和12)年、東京生まれ。一家は戦災者の集団帰農計画である「拓北農兵隊」として北海道に渡りますが、入植地の鹿追(しかおい)に着いたのは終戦の前日。荒れ果てた土地で、日勝の一家は厳しい生活を強いられます。


    兄の一明が東京藝術大学に進学した事もあって、絵画に親しんでいた日勝。中学卒業後は、農業を続けながら絵を描きます。北海道内の展覧会で作品を発表し、徐々に評価を高めていきます。


    日勝の油彩は、ベニヤ板にペインティング・ナイフを用いるスタイル。素材の質感と手応えが気に入ったためでしょうか。


    その画風は、15年に満たない短い期間でしたが、何度もスタイルを変化させています。画業の初期は、労働者などをモチーフに暗いモノトーンで描写。後に、牛や農耕馬などの質感表現に拘り、色彩や形へ関心が移っていきました。



    1964年には、独立展に初入選。その後も順調に入選を重ね、画家として飛躍していきます。この時代の作品は、豊かな色彩で荒々しい筆致。フォービスムなど同時代美術からも影響を受けており、いわゆる「農民画家」というイメージとは異なります。


    展覧会では日勝に強い影響を与えた同時代の作家として、曺良奎、海老原喜之助、北川民次、海老原暎らの作品もあわせて紹介されています。


    日勝は1970年に32歳の若さで死去。画室に残っていた描きかけの絵が《馬(絶筆・未完)》です。頭部などは完成しているものの、残りの部分はベニヤ板がそのまま露出。馬の虚ろな目は、強く印象に残ります。未完ではありますが、日勝を代表する名作です。


    新型コロナウイルスの影響で、4月18日に予定されていた開幕が延期されていた本展。1カ月半遅れで、6月2日(火)からついにスタートとなりました。


    チケットは日時指定による予約制、ローソンチケット(Lコード30066)で販売されます。美術館の受付ではチケット販売は原則行わないのと、ローソンは美術館のすぐ近くにはないので、ご注意ください。


    東京展の後に神田日勝記念美術館(7/11~9/6)、北海道立近代美術館(9/19~11/8)に巡回します。


    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2020年4月17日 ]


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    NHKサービスセンター
    ¥ 1,210

    会場
    会期
    2020年6月2日(火)~6月28日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~18:00
    ※金曜日は20:00まで
    ※入館は閉館の30分前まで
    休館日
    月曜日(5月4日、6月22日は開館)
    住所
    東京都千代田区丸の内1-9-1 JR東京駅 丸の内北口 改札前
    電話 03-3212-2485
    公式サイト http://www.ejrcf.or.jp/gallery/
    料金
    一般 1,100(900)円 / 高校・大学生 900(700)円 / 中学生以下無料

    ※()内は20名以上の団体料金
    ※20名以上の団体は4/19~6/19に限り、一般800円、高校・大学生600円
    ※障がい者手帳等持参の方は当日入館料から100円引き(介添者1名は無料)
    展覧会詳細 「神田日勝 大地への筆触」 詳細情報
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