私たち日本人とかかわりの深い「木」。
公園や街角の木、木造の住宅など、私たちは木と親しみながら生活していると同時に、「ご神木」など、木を尊重する文化を持っています。
その「木」で作られた仏像に注目した展覧会をご紹介いたします。
日本最初の仏像は、6世紀に大阪湾に漂着したクスノキで彫られたものと言われています。
仏教が伝来した飛鳥時代には、仏像はすべてクスノキで彫られていたそうです。当時の仏像は純粋な信仰の対象であり、側面や背面を見ることを想定していないため、人体の形とは異なる、こんな薄っぺらいものも。
頭と体のバランス、表情がなんだかユーモラスで楽しいです。
木造 菩薩立像 飛鳥時代 東京国立博物館
時代とともに、技術の発展やデザインの流行による変化があるのも面白いところで、平安時代中期には、表面に鑿跡(のみあと)を残す「鉈彫」(なたぼり)像が登場。
こちらの仏像は、宝誌和尚という、分身の術を使ったり、予言を行ったりしたといわれるマジカルな伝説の人物の仏像です。
画家が彼の姿を描こうとした時に、自ら顔を裂くと、中から十二面(十一面)の観音菩薩が表れ、彼の姿は描かれなかったという奇譚があります。
重要文化財 木造 宝誌和尚立像 平安時代 京都・西往寺
こちらの、一見、似たような三体の仏像の真ん中は平安時代、左右の二体は鎌倉時代に造られたもの。
微妙な違いを、ぜひ実物をじっくりご覧になって見つけてみてください。
例えば胸部の張り、顔などが違うそうですよ。
木造 阿弥陀如来坐像 平安時代 大阪・大門寺(中央)
一本の木を彫って仏像の全身から台座までを造る一木造(いちぼくづくり)では、木の部分によって乾燥による損傷(「干割れ(ひわれ)」)が起きるので、内刳(うちぐり)といって蔵の内部を彫り出して造られるものが現れてきます。
今回の展覧会では、すべての仏像が360度の角度から見られるように展示されているため、このように背面まで見ることができます。
重要文化財 木造 観音菩薩立像 平安時代 滋賀・櫟野寺
ちなみに照明も、仏像の立体感が感じられるように工夫されているそうです。
暗すぎず明るすぎない、絶妙な雰囲気も醸し出しています。
こちらの画像のコーナーは、壁面に映った陰影まで美しいと思いました。
木造 十一面観音菩薩立像 鎌倉時代 大阪・四天王寺
ケースに入っていない仏像は、間近で、形や「彫り」をじっくりと見ることができるのも嬉しいですね。
さらに時代が進むと、片足だけで立つ難しいポーズを高い技術でバランスよく保つ像が造られたり。
木造 蔵王権現立像 南北朝時代 大阪・大門寺
今にも動き出しそうな躍動感がすごいです。
大きな仏像だけでなく、小さなものもあります。
こちらは白檀で彫られた鎌倉時代の閻魔像。
精巧で細密な表現が、たった4cmほどの像に施されています。
木造 閻魔王坐像 鎌倉時代 大阪・正明寺
江戸時代には、独特かつ斬新な仏像を数多く造った円空の出現も。
円空作 木造 秋葉権現三尊像 江戸時代
後ろから見ると、こんな感じです。
円空作 木造 秋葉権現三尊像 江戸時代
また、会場内には、種類によって手触りや重さの違う「木」を体感できるコーナーもありますので、ぜひ触れてみてください。
体験コーナー
今回のように、宗派を超えての木造の仏像の展示は大変珍しいものだそうです。
金属や石で造られた仏像には静謐でひんやりとしたオーラが漂いますが、木の仏像にはどれも温かみがあって、表情も柔らかく、とても穏やかな気持ちにしてくれます。
木造の仏像の歴史や変遷とともに、木を大切にして、木とともに歩んできた日本の文化も感じられる展覧会。
今は桜が満開ですが、これから緑と色とりどりの花で彩られる天王寺公園の風景も楽しみつつ、足を運ばれてはいかがでしょうか。
大阪市美術館
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白川瑞穂
関西在住の会社員です。学生の頃から美術鑑賞が趣味で、関西を中心に、色々なジャンルのミュージアムに出かけています。観た展示を一般人目線でお伝えしていきます。
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