元祖ゆるキャラ?十人十色の戯画の世界を心ゆくまで堪能する!
ユーモアとウィットにとんだ戯画。
原点の一つとされるのが、18世紀に大坂で大流行した鳥羽絵(とばえ)です。
鳥羽絵はなんといっても、ゆる~い人間表現に注目です!
小さな鼻に低い鼻、口は大きく手足は極端に細長いのが特徴で、ゆるキャラの先駆者といえるかもしれません。
江戸の中期に大坂を中心に活躍した絵師の耳鳥斎(にちょうさい)(生没年不詳)は、略筆で描いた独特な画風で人気を博しました。
耳鳥斎《地獄図巻》(部分)大阪歴史博物館蔵
こちらは耳鳥斎を代表する作品の一つで、大変評判が良かったのか、似たような作品が数点残されています。
描かれているのは、鬼が地獄に堕ちた人間を罰する光景です。太い大根を口につっこまれる、こんな罰ってありますか?(笑)
人間よりも明らかに大きな大根をぐいっと口に押し込まれた後、今度は正座をして口にくわえさせられています。
罪人の表情に着目してみると、罰を楽しんでいるようにも見受けられる、なんともおもしろい作品です。
こちらは、葛飾北斎《北斎漫画》十編(文政2年(1819)浦上満氏蔵
《富嶽三十六景》でおなじみの北斎の戯画も耳鳥斎に劣らず、見る者をくすっとさせる要素満載です。
全12編からなる《北斎漫画》はほぼ戯画のみで構成される作品で、このページにはおじさんたちがゆる~く組体操のようなものをしている様子や、忘年会芸のhow toらしきものが描かれています。
今年の宴会芸の参考にしてみてはいかがでしょうか。
左から、歌川国芳《きんぎょ尽 まとい》ベルギー王立美術歴史博物館蔵、歌川国芳《金魚づくし 百ものがたり》ベルギー王立美術歴史博物館蔵
国芳のこの可愛い「金魚づくし」シリーズのうち、1枚くらいは皆さんもどこかでご覧になったことがあるのではないでしょうか。
錦絵には様々なサイズがあるのですが、国芳の金魚シリーズはその中でも二番目に大きな中判サイズ(19.5cm×26.5cm)。
中判サイズは大判サイズの半分の大きさで、たいてい2図まとめて摺ることが多く、偶数で制作されることが推測されます。
「金魚づくし」シリーズは現在、9図が見つかっていることから、実は10図目の作品もあるのではないか、というわけです。
大阪市立美術館では、現在見つかっている9図すべてを世界初!一挙公開していますので、じっくりご覧ください。
※一挙公開は5月13日までです。
次に展示室の様子をご紹介します。
こちらは先ほどご紹介した耳鳥斎の《地獄図巻》シリーズ。
この展覧会を見て私は耳鳥斎の大ファンになりました。
もうこのゆるさがたまらなくいい!!!!
こちらは葛飾北斎の《鳥羽絵集会》シリーズです。
歯を見せて豪快に笑う、人々がたくさん描かれています。
こんなに発色が良い状態で残っているなんて、びっくりですね。
笑いを文化として培ってきた大阪の地で、十人十色の戯画の世界をぜひご体感ください。
エリアレポーターのご紹介
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胤森由梨
美術が大好きなアートライターです。美術鑑賞に関わる仕事を広げていきたいと思っています。現在、instagram「tanemo0417」「artgram1001」でもアート情報を発信中です! ブログ「たねもーのアート録」http://tanemo-art.com/
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