「明恵(みょうえ)の夢と高山寺」展が、大阪の中之島香雪(こうせつ)美術館で開催されています。
おだやかな表情のお坊さん。
明恵上人(みょうえしょうにん)という鎌倉時代の僧侶で、生涯にわたり自分の夢を記録したことでも知られています。
明恵と、彼の見た「夢」が展覧会のテーマです。
明恵は、京都の高山寺を築いた人です。
高山寺といえば、よく知られているのはこちらの絵巻物ではないでしょうか。
国宝《鳥獣戯画 甲巻》平安時代、12世紀 高山寺 前期:3月21日~4月14日
展示は鳥獣戯画から始まります。
印刷されたものを目にする機会は多いですが、実物を目にする感動は格別。
ウサギや猿の楽しそうな様子に、思わず頬がゆるみます。
鳥獣戯画は、甲巻(こうかん)・乙巻(おつかん)・丙巻(へいかん)・丁巻(ていかん)の4巻からなります。
上の写真は甲巻で、乙巻とともに4月14日まで展示されます。丙巻と丁巻は4月16日~5月6日の展示です。(それぞれの期間中に巻き替えがあります)
このあと、明恵と「夢」をテーマにした展示が続きます。
〈第1章 夢をみる 明恵という人〉では、明恵の肖像画などが紹介されています。
〈第2章 夢をしるす ある日の夢記(ゆめのき)〉
明恵は19歳から晩年の58歳にいたる約40年間、夢を記録し続けました。
それが夢記です。
《夢記》鎌倉時代、13世紀 村山コレクション 全期間
勢いを感じさせる筆致。夢の記憶が確かなうちに書きとめておこうとしたのでしょうか。
この巻物には、正月1か月間の夢が日付順に記されているそうです。
ときには夢で見たイメージを絵にすることもありました。
重要文化財 《夢記 第十篇》鎌倉時代、13世紀 高山寺 全期間
ここに描かれている仏は、明恵が究めようとした『華厳経(けごんきょう)』というお経の主役です。
宗教的なイメージをもつ夢もそうでない夢も、大切な意味があるものとして記録し続け、感想や解釈を記すこともあったようです。
曼荼羅(まんだら)がいくつか展示されています。
重要文化財《華厳海会善知識曼荼羅(けごんかいえぜんちしきまんだら)》鎌倉時代、13世紀 東大寺 前期:3月21日~4月14日
手前の曼荼羅の中央に大きく描かれている仏は、一枚前の写真でご紹介した、明恵の夢に現れ、絵に描かれたものと同じ仏なのだそうです。
重要文化財《神鹿(しんろく)》鎌倉時代、13世紀 高山寺 全期間
どうも、この鹿には魂が入っているように思えてなりません。
木彫りでつくられています。右は妻鹿(めじか)。左の男鹿(おじか)は、おだやかで落ち着いたたたずまい。
ずっとそばで見ていたいような気がします。
〈第3章 夢のあとさき 明恵示寂(じじゃく)〉では、明恵の遺言書(写本)や、明恵が死後会いたいと願った弥勒菩薩像などが展示されています。
〈第4章 夢をつなぐ 村山コレクションへ〉
重要文化財《子犬》鎌倉時代、13世紀 高山寺 全期間
ころころと可愛らしい子犬。首をかしげて、何を見ているのでしょうか。
明恵は犬を可愛がっており、犬の夢もよく見たそうです。
このほか、香雪美術館の「村山コレクション」から、高山寺伝来の作品が展示されています。
高山寺がこれだけたくさんの美術品を所蔵しているのは、明恵の存在を抜きにしては考えられない、といいます。
組織を大きくすることも権力も願わず、ひたすら釈迦を慕い、その背中を追った明恵。
私は鳥獣戯画を目当てに足を運びましたが、明恵や夢、仏教に関心のある方には、より奥深い楽しみがあるのではないかと思います。
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tomokoy
京阪神を中心に、気になる展示をぷらぷら見に出かけています。
「こんな見方も有りか」という感じでご覧いただければと思います。
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