小学校の国語の教科書に採用されたことで、日本では馴染み深い絵本『スイミー』。作者はレオ・レオーニで、40冊近くの絵本が出版されています。
本展では、『スイミー』を含む絵本原画、絵本作家になる前のグラフィックデザインの仕事、絵画、彫刻、アニメの元絵など、ジャンルを超えた作品たちとレオーニの生涯を、4つのキーワードで紹介する巡回展が、ついに東京にやって来ました。
左)参考『スイミー』絵本 右)『スイミー』原画 1963年 水彩、モノタイプ
レオとアート
展示の始まりは油彩画で、絵本での作風とのギャップに驚きました。
左)〈占い師〉1949〜50年頃 油彩、キャンバス/右)〈ヨーリオの娘(オイディプス王)〉1946年 不透明水彩、キャンバス
このキーワードで選ばれた3冊の絵本は、自分を表現する手段がそれぞれ詩、音楽、絵画という芸術家のねずみのお話です。
「芸術家は社会に貢献する責任がある」というレオーニの言葉を体現するかのような『フレデリック』など、自身を投影するような作品です。
レオーニの絵本は、内容に合わせて水彩、油彩、コラージュ、スタンピングなど様々な技法が組み合わせられています。
コラージュと一口に言っても、乾燥した穀物にはナイフで切ったり、穀物の食べかすやねずみの毛並みは紙をちぎったりと、表現したい質感によって使い分けられていることが、原画を見ることでよく分かります。
『フレデリック』原画 1967年 水彩、パステル、コラージュ、紙
自分探し
自分探しといっても、一昔前に流行ったような、モラトリアムの若者を揶揄するような意味ではありません。
絵本の主人公たちに共通しているのは、誰かと比べたり、羨ましがられたことをきっかけに、今までの行動パターンを変えて、等身大の自分を認識していく姿。
その姿は、子供時代にヨーロッパ、アメリカを転々としたレオーニ自身と重なるようです。
『アレクサンダ と ぜんまいねずみ』原画 1983年 水彩、コラージュ、紙
平和を求めて
ユダヤ人だったレオーニは、第二次世界大戦が始まった年に、イタリアからアメリカへ亡命しています。
この章では、平和を求めて移り住んだアメリカでのアート・ディレクターとしての仕事と、争いの愚かさや平和的解決を訴えるメッセージを含んだ絵本原画が展示されています。
左)ユネスコポスター「世界公開」1955年 印刷、紙/中央)『ザ・ファミリー・オブ・マン(人間家族)』表紙 1955年 印刷、紙/右)ニューヨーク近代美術館創立25周年記念ポスター 1954年 印刷、紙
『みどりのしっぽのねずみ』は、珍しく油彩で描かれた絵本ですが、心の奥の狂気と油彩の重たさが重なります。
『みどりの しっぽの ねずみ』原画 1973年 油彩、ボード
リアル?フィクション?
本物と見間違えそうなにんじんを描いたかと思えば、
『うさぎを つくろう』原画 1982年 色鉛筆、鉛筆、コラージュ、紙
現実、想像の人物が混在する「想像肖像」シリーズ、架空の「平行植物」シリーズなど、物語と現実世界の境界線があいまいな作品が展示され、なかなかシュールです。
展示風景(「平行植物」シリーズ)
レオーニの絵本に関する展覧会は世界各地で開催されていますが、今回ほど包括されたものはないと、レオーニのお孫さんであるアニーさんがお話されていたことが印象的でした。
※許可を得て撮影しています
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