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    レポート
    没後90年 鉄斎 TESSAI
    出光美術館 | 東京都
    老いてますます盛ん、京都文人の巨星
    幕末から明治にかけて京画壇で活躍した富岡鉄斎(とみおかてっさい 1836~1924)。儒学者の道を歩みながら「余技」として書画に親しんだ鉄斎は、正真正銘の文人画家です。没後90年のメモリアルイヤーの今年、出光美術館で記念展が始まっています。
    (右から)《天賜吉慶図》大正6年 / 《東瀛僊閣図》大正7年
    (右から)《萬竹草堂図》明治時代 / 《十二ヶ月図》12幅対の内 慶應3年
    《北山溪図巻》明治11年
    《高賢図》12幅対の内 明治時代
    (右から)《口出蓬莱図》明治26年 / 《明恵上人旧廬之図》明治34年
    (右から)《普陀落伽観世音菩薩図》大正4年 / 《白衣大士図》大正9年
    《放牛桃林図・大平有象図》明治時代
    (左奥から)《狗子図》明治31年 / 《猿猴読書図》大正9年
    (左から)《蓬莱山図》大正12年 / 《旭光照波図》大正11年 / 《蓬莱仙境図》大正12年
    出光コレクションから鉄斎作品約70件を一堂に集めた本展。出光美術館ファンの方は、2004年の「没後八十年 最後の文人 鉄斎 ― 富士山から蓬莱山へ ―」展を覚えている方もいるかもしれません。鉄斎だけにスポットを当てた展覧会は、出光美術館ではそれ以来となります。



    展覧会の構成は以下。特集コーナー以外は、ほぼ年代順です。

     1章 若き日、鉄斎の眼差し ─ 学ぶに如かず
     2章 清風への想い ─ 心源をあらう
     3章 好古趣味 ─ 先人への憧れと結縁
     4章 いざ、理想郷へ
     5章 奇跡の画業 ─ 自在なる境地へ
     <特集> 扇面を愛す

    人物画、風景画、仏画、戯画など画業は多彩。会場中盤の《口出蓬莱図》は口の中から神山を出す仙術を描いたユニークな作品です。



    会場で目をひく大画面は《放牛桃林図・太平有象図》。6曲1双の屏風をあえて完全に広げ、L字型に配置しました。牛は田園における太平の象徴。ここでは屏風の間に立ってお楽しみください。

    群青や緑青の顔料を使って描いた着色山水画「青緑(せいりょく)山水」。山の輪郭や皴に金彩を使うものは金碧山水画ともいわれます。

    世俗から離れ、山奥に居を構える隠遁生活を望んでいた古代中国の文人たち。幕末の文人画家にもその考えは広まり、鉄斎も晩年には青緑山水を数多く描きました。



    老境に入っても衰えを知らなかった、鉄斎の画業。80歳代で独特の瀟洒な画風を完成させました。

    最晩年の大作が、88歳で描いた《蓬莱仙境図》。山々は抽象画のような豪快さの一方で、背後に鹿が控える仙人、空を舞う二羽の鶴はきっちりと描写。メリハリがついた構成です。

    晩年まで展覧会を開催するなど精力的に活躍していましたが、1924(大正13)年、持病だった胆石症で死去。文人としての道を追及しつづけた満88歳の人生でした。



    誇り高い文人画家だった鉄斎は「儂(わし)の画を観るなら、まずは賛文から読んでくれ」と語っていましたが、何ものにもとらわれない自由で闊達な画業は、賛が読めなくても十分に魅力的です。

    巡回の予定はなく、出光美術館だけでの開催です。お見逃しなく。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年6月18日 ]



    ■出光美術館 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2014年6月14日(土)~8月3日(日)
    会期終了
    開館時間
    午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
    休館日
    月曜日休館 ただし7月21日は開館
    住所
    東京都千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9F
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト http://www.idemitsu.co.jp/museum/
    料金
    一般 1,000円/高・大生 700円
    ※20名以上の団体は200円引き
    展覧会詳細 「没後90年 鉄斎―TESSAI」 詳細情報
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