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    レポート
    生誕110年 片岡球子展
    東京国立近代美術館 | 東京都
    挑み続けて、画業80年
    鮮烈な色彩、大胆にデフォルメされた形、力強い筆使い…。他の追随を許さない強烈な個性で、一途に創作を続けた片岡球子(かたおかたまこ:1905-2008)、80年に及ぶ画業を振り返る大規模な回顧展です。
    (左から)《面構 足利尊氏》1966年 神奈川県立近代美術館 / 《面構 足利義満》1966年 神奈川県立近代美術館 / 《面構 足利義政》1966年 神奈川県立近代美術館
    (左から)《ポーズ4》1986年 札幌芸術の森美術館 / 《学ぶ子等》1933年 北海道立近代美術館
    (左から)《炬燵》1935年 北海道立近代美術館 / 《枇杷》1930年 北海道立近代美術館
    (左から)《カンナ》1953年 神奈川県立近代美術館 / 《初夏》1956年 北海道立近代美術館
    (左から)《伊豆風景》1964年 北海道立近代美術館 / 《山(富士山)》1964年 北海道立近代美術館
    (左から)《幻想》1961年 神奈川県立近代美術館 / 《雅楽(女神と胡飲酒)》1967年 北海道立近代美術館
    (左から)《面構 葛飾北斎・瀧澤馬琴》1979年 愛知県美術館 / 《面構 歌川国貞と四世鶴屋南北》1982年 東京国立近代美術館
    スケッチブック
    第四章「絵画制作の根本への挑戦 ─ 裸婦」
    小倉遊亀(おぐらゆき:1895-2000)とともに女性画家の最長老格として、長く活躍した片岡球子。本展は生誕110年を記念した企画展です。

    球子の初期の代表作が、1930年の院展入選作《枇杷》。ただ、球子は展覧会の入選には苦戦し、自ら「落選の神様」と称していた事もあります。

    その球子が、1942年に大観賞を受賞したのが《祈禱の僧》。表情の捉え方は後の作品にも繋がります。

    必ずしも高い評価ばかりではなかった球子に対し、小林古径が「あなたの絵はゲテモノだが、ゲテモノと本物は紙一重。あなたの絵を絶対に変えてはいけない」と激励した事は、有名なエピソードです。

    少女を描いた《曼珠沙華》は、1936年の作品。個人蔵という事もあって、これまでほとんど公開されませんでした。本展は代表作だけでなく「埋もれていた名作」が紹介されている事も特徴的です。


    第一章「個性との闘い ─ 初期作品」

    球子の画業で大きな転機になった作品が、1953年の《カンナ》です。

    フォルムを大きくとらえるようになり、色使いも鮮やかに、60年代前半になると画材にボンドなども用いるようになり、さらに表現は迫力を増していきます。

    海や山など具体的な風景をモチーフにしながらも、海岸の岩は木塊のようで、富士は極彩色で塗り分け。激しくデフォルメされた造形が、画面を埋め尽くしていきます。


    第二章「対象の観察と個性の発露 ─ 身近な人物、風景」

    球子の代表的なシリーズが、1966年から描きはじめた〈面構〉(つらがまえ)。歴史上の人物を題材に、まるで目の前にいるかのように表現していきます。

    筆使いは伸びやかで自由奔放に思えますが、実は入念に準備をしています。人物の事績は書物で調べ、肖像画や彫像があれば写し、伝統芸能の場合は実際の舞台を取材するなど、徹底的に調査。人物だけでなく装束の文様にも興味があったようで、作品からは熱心な研究の跡が伺えます。


    第三章「羽ばたく想像の翼 ─ 物語、歴史上の人物」

    評価が定まり 、功成り名遂げた後も球子の挑戦は続きます。

    1980年代初頭、80歳を目前に始めた新たなテーマは「裸婦」。美術教育の基礎ともいえる裸婦に、この時期から改めて取り組み出したのです。

    さまざまなポーズの裸婦を、画面に浮かぶように描いた球子。100歳まで、多くの裸婦を描きました。

    球子は急性心不全のため、2008年に103歳で死去。対象に真摯に向き合った長い長い画業は、会場最後の年表でもご確認いただけます。


    第四章「絵画制作の根本への挑戦 ─ 裸婦」

    会場にはスケッチ類も紹介されています。初期のスケッチは対象を忠実にとらえようとしていますが、後期になるとスケッチの段階から荒々しい筆跡に。創作の変遷もお楽しみ下さい。

    東京展は5月17日(日)まで。その後は愛知県美術館に巡回(6月12日~7月26日)します。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年4月6日 ]

    もっと知りたい片岡球子―生涯と作品もっと知りたい片岡球子―生涯と作品

    土岐 美由紀 (著), 中村 麗子 (著)

    東京美術
    ¥ 1,944

    料金一般当日:1,400円
     → チケットのお求めはお出かけ前にicon

     
    会場
    会期
    2015年4月7日(火)~5月17日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:00(入館は16:30まで)
    ※金曜・土曜は20:00まで開館(入館は19:30まで)
    休館日
    月曜日(ただし5月4日は開館)
    住所
    東京都千代田区北の丸公園3-1
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト http://tamako2015.exhn.jp/
    料金
    一般 1,400(1,200/1,000)円/大学生 900(800/600)円/高校生 400(300/200)円
    ※()内は前売/20名以上の団体料金
    ※中学生以下、障害者手帳をご提示の方とその付添者(1名)は無料
    展覧会詳細 生誕110年 片岡球子展 詳細情報
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