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    レポート
    ベルギー奇想の系譜 ボスからマグリット、ヤン・ファーブルまで
    Bunkamura ザ・ミュージアム | 東京都
    奇想の流れ、500年
    ヨーロッパ中ほどに位置するベルギー。陸海ともに交通の要衝で、たびたび大国の戦乱に巻き込まれたこの地には、幻想的な世界を表現する流れが脈々と受け継がれています。「奇想」をテーマに、約500年のベルギー美術を俯瞰する展覧会が、Bunkamura ザ・ミュージアムに巡回してきました。
    ヒエロニムス・ボス工房《トゥヌグダルスの幻視》1490-1500年頃 ラサロ・ガルディアーノ財団 ©Fundación Lázaro Galdiano
    (左から)ヘリ・メット・ド・プレス《ソドムの火災、ロトとその娘たち》制作年不詳 ナミュール考古学美術館 / ピーテル・ハイス(帰属)《聖アントニウスの誘惑》制作年不詳 ド・ヨンケール画廊
    ヤン・マンデイン《聖クリストフォロス》制作年不詳 ド・ヨンケール画廊
    (左から)アルーラト・デュハメール[版画に基づく]、ヨハネス&リュカス・ファン・ドゥーテクム[彫版]、ヒエロニムス・コック[発行]《包囲された象》1563年頃 プランタン=モレトゥス博物館 / ヒエロニムス・ボスの模倣者[原画]、ピーテル・ファン・デル・ヘイデン[彫版]、ヒエロニムス・コック[発行]《愚者の船》1559年 ベルギー王立図書館
    (左から)フェリシアン・ロップス《聖アントニウスの誘惑》1878年 クレラー=ミュラー美術館 / フェリシアン・ロップス[原画]、アルベール・ベルトラン[彫版]《娼婦政治家》1896年 フェリシアン・ロップス美術館
    (左から)ジャン・デルヴィル《レテ河の水を飲むダンテ》1919年 姫路市立美術館 / ジャン・デルヴィル《赤死病の仮面》1890年頃 フィリップ・セルク・コレクション
    (左から)レオン・スピリアールト《堤防と砂浜》1908-1909年 個人蔵 / ウィリアム・ドグーヴ・ド・ヌンク《運河》1894年 クレラー=ミュラー美術館
    (左から)ジェームズ・アンソール《オルガンに向かうアンソール》1933年 メナード美術館 / ジェームズ・アンソール《キリストの誘惑》1913年 伊丹市立美術館
    会場入口
    展覧会は15世紀から。奇想のルーツとして紹介されているヒエロニムス・ボスは地獄のイメージを鮮烈に描いていますが、この地がしばしば戦地になった事が影響していると思われます。

    展覧会メインビジュアルの《トゥヌグダルスの幻視》は、ボス工房の作品。罪と罰の精緻な表現ですが、どことなくユーモラスにも感じられます。

    この流れで「第二のボス」と言われたピーテル・ブリューゲル(父)が紹介されているのは納得ですが、やや意外に思えるのがバロックの巨匠ルーベンス。ただ、ルーベンスの作品は幻想的ではないものの、生々しく描かれた魔物の肉体は、確かに「奇想」です。


    第1章「15-17世紀のフランドル美術」

    続いて19世紀末から20世紀初頭。ベルギーは1830年に独立、工業化と都市化が進む中で、科学に背を向けて目に見えないものを追及する芸術家たちは「象徴主義」に流れていきます。

    ここで注目はフェリシアン・ロップス。背徳のイメージと強烈なエロティシズムで、独自の世界を描き出しました。

    さらに、ベルギー象徴主義を代表するフェルナン・クノップフ、仮面のモチーフで知られるジェームズ・アンソールと、内面を表現する作品が並びます。


    第2章「19世紀末から20世紀初頭のベルギー象徴派・表現主義」

    展覧会はこの後、3章「20世紀のシュルレアリスムから現代まで」と進み、ポール・デルヴォーやルネ・マグリットなどシュルレアリスムの巨匠から、現在活躍中の美術家までを紹介。奇想の系譜が受け継がれている事を示していますが、残念ながらこのコーナーは撮影不可。会場でお楽しみください。

    メインビジュアルからボスやブリューゲルがクローズアップされがちですが、むしろ見どころはそれ以降。シビアな表現の作品が印象に残りました。展覧会は宇都宮美術館、兵庫県立美術館と回り、Bunkamura ザ・ミュージアムが最終会場です。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年7月18日 ]

    図説 ヒエロニムス・ボス: 世紀末の奇想の画家図説 ヒエロニムス・ボス: 世紀末の奇想の画家

    岡部 紘三 (著)

    河出書房新社
    ¥ 1,944


    ■ベルギー奇想の系譜 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2017年7月15日(土)~9月24日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~18:00(毎週金・土曜日は21:00迄) ※入館は各閉館の30分前まで
    休館日
    7/18(火)、8/22(火)
    住所
    東京都渋谷区道玄坂2-24-1 Bunkamura B1F
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/17_belgium/
    料金
    一般 1,500(1,300)円/大学・高校生 1,000(800)円/中学・小学生 700(500)円
    ◎※()内は20名以上の団体料金及び前売り料金
    ◎学生券をお求めの場合は、学生証のご提示をお願いいたします。(小学生は除く)
    ◎障害者手帳のご提示で割引料金あり。詳細は窓口でお尋ねください。
    展覧会詳細 「ベルギー奇想の系譜 ボスからマグリット、ヤン・ファーブルまで」 詳細情報
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