「ロートレック展　パリ、美しき時代を生きて」

　アンリ・ド・トゥールーズ＝ロートレックは、1864年、南フランスのアルビで、貴族の末裔として生をうけました。生まれつき体が弱く、少年時代の骨折がもとで両脚の成長が止まってしまいます。それは彼に上半身が大人で脚だけが短いという特異な風貌を与えることになりました。小さいときから素描の才能を示し、レオン・ボナやフェルナン・コルモンといったアカデミックな画家について本格的に絵画を学んだ。彼が、その才能を開花させたのは、モンマルトルに住み着き、ダンスホールや劇場、娼館などに入り浸って、そこに集う芸人たちや娼婦、市井の人々の姿を描くようになってからのことです。それは、37年という短い生涯の、早すぎた晩年の10数年間のことでした。この間にロートレックは、油彩画だけでなく、版画やポスター、挿絵などさまざまな分野で多くの傑作を残しました。その大胆で斬新な画面構成によるオリジナルティあふれる作品は、ピカソをはじめとする当時の画家たちに大きな影響を与えました。 　オルセー美術館、サンパウロ美術館、トゥールーズ＝ロートレック美術館など、国内外から集められた名作の数々によって構成される本展は、ロートレック晩年の10年間に焦点をしぼり、同時代の資料もまじえながら、ロートレック芸術の全貌を示そうとするものです。総出品点数は関連資料を含め約300点、日本初公開作品を含む油彩画の名品の数々の出品は大きな見どころです。