斉藤里香の版画

【作者の言葉】　 　身の回りに何気なく存在するものたち。時にはそのものたちの気配、生命、神のようなものを感じ、匂い、音、色となり私の五感を刺激します。 　それらの、風景や喜怒哀楽、他人のちょっとした言葉の印象など、実際に体験したいろいろな出来事が自分の中に蓄積され、カタチとなり、表現の源になっています。 　版に刻み和紙に摺ること水と絵の具は紙に溜まったり、繊維の奥へと染み込んだり、時に思いも寄らない姿に変化したり。私にとって木版画の工程は、嬉しい記憶も悲しい記憶もやがては薄れていき、新たな希望へと生まれかわっていくことにも似て、常に新鮮な驚きを与えてくれる不思議な技法です。 　この度の展示は、いまの自分の素となる初期の作品から始まり大賞受賞作品までをおおよそ制作順に展示しています。作品を見て私の実際の体験が伝わることはないと思いますが、ひょっとして見る人自身の体験や記憶の中の景色と重なることがあったら…楽しいですね。