加藤唐九郎(1898-1985)は、近・現代陶芸界の鬼才であり、ひたすらに桃山陶に挑戦を続けました。その波乱に満ちた「窯ぐれ」人生から生み出された作品群は、黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部・唐津・信楽・伊賀・高麗など実に多彩で、とくに茶碗をはじめとする茶陶においては他の追随を許さない独自の作風を確立しました。
加藤重高(1927~)は、唐九郎の側にあって作陶はもちろんのこと、その他の面でも唐九郎を支え、自身も陶芸家として作陶に打ち込み、叩きの技法を用いた迫力のある量感を持つ花器や水指などを生み出して高い評価を受けました。そして円熟を迎えた昨今は、多彩な表情を見せる志野を中心とした茶碗・花生などの茶陶の世界に、独特の個性を映し出しています。
加藤高宏(1972~)は、祖父や父の原点である桃山陶を学ぶとともに、祖父の作風をも研究しながら独自の作風を確立しつつあります。なかでも志野・瀬戸黒などには、独自の創意を加え、造形・釉調ともに強い息吹が感じられます。
本展では、加藤唐九郎の初期から絶作にいたるまでの多彩な作品群から厳選された代表作により陶芸界に残した大きな足跡を見つめると同時に、その血を受け継ぐ重高氏、高宏氏の新作をあわせた約110点を一堂に会し、三人の共通性、独自性を展観しようとするものです。