掛け軸・絵巻物・屏風・襖絵…と、実にバラエティ豊かな形態を誇る日本の絵画。さらにそれらをよく見ていくと、2点・3点、あるいはそれ以上の点数がセットになり「組み合わせ」て鑑賞する作品が多いことに気づかされます。
たとえば、岸竹堂(きしちくどう)(1826-1897)の屏風「保津峡図」(1892年)のように、2枚の屏風を左右合わせて鑑賞することで、まるで眼前に迫るような荒々しい保津川の流れと雄大な渓谷のパノラマが出現したり、北野恒富(きたのつねとみ)(1880-1947)の対で制作された美人画「暖か」「鏡の前」(1915年)のように、着物の色・女性のポーズとも異なる2面を並べることで、色彩や構図的な対比の面白さはもちろん、鑑賞者にさまざまなドラマを感じさせたりと、「組み合わせ」の作品には1つの画面で完結する作品とはまた異なる表現や創意工夫を見いだすことができると言えます。
また、季節の移ろいを感じさせる四季や十二ヶ月、近江八景のような景勝を描くために、何枚・何面もの絵が「組み合わせ」られている場合は、それぞれの画面に個性を持たせながらも、いかに全体のバランスを取って1つの作品としてまとめられているかがひとつの注目ポイントと言えるでしょう。
そんな「組み合わせ」の面白さにスポットを当てた本展では、当館所蔵の屏風や掛軸を中心に「一双」「一対」「揃い」など、1点だけでは完結しない日本絵画の作品約25点をご紹介します。
本展が、日本絵画の持つユニークな形態と表現に改めて注目していただく機会になれば幸いです。