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    レポート
    明治150年記念 真明解・明治美術
    神奈川県立歴史博物館 | 神奈川県
    「美術」と「美術らしきもの」
    ちょうど150年前の明治維新。政治システムはもちろん、市民の生活や文化まで大きく変化しました。それまでの日本に存在しなかった「美術」という概念が生まれたのもこの時期。多彩な展示品で「明治美術」を幅広く紹介する展覧会が、神奈川県立歴史博物館で開催中です。
    会場
    《大倉孫兵衞旧蔵錦絵画帖》文久年間~明治20年代
    「洋画」
    《五姓田派鉛筆デッサン類》明治10年代後半~20年代前半
    (左から)初代宮川香山《高浮彫風神雷神花瓶》 / 初代宮川香山《高浮彫桜に群鳩花瓶》
    《写真アルバム(写真焼付漆製表紙)》
    「石版画」
    青木恒三郎《内国旅行日本名所図会》
    藪崎芳次郎《皇国貴顕肖像》
    1967年に開館した神奈川県立歴史博物館(当時は神奈川県立博物館)。改修工事による休館中に、開館50周年を迎えました。

    館では以前から、幕末明治の横浜を中心に、西洋の美術に影響を受けた作品を収集してきました。本展はその成果を紹介する企画です。

    展覧会は「序」と「結」の間に「写真と写実 ─ 二次元の挑戦 ─」「見世物から工芸へ ─ 三次元の挑戦 ─」「版と刷 ─ 印刷革命の鼓動 ─」の3章。絵画・立体・印刷という展開ですが、章ごとではなく、会場全体で明治という時代を感じさせる狙いです。

    最初の展示室は、展覧会を象徴する作品からスタート。幕末明治最大の版元、大倉孫兵衞が自ら選んだ錦絵画帖は、本展初公開。明治浮世絵の重要資料です。

    大きな展示室に進むと、展示ケースには膨大な作品が。「より多くの作品や資料を並べることで、多くのモノが響き合い、共鳴し合い、皆さまに明治という時代の力強さが伝わると信じている」(会場の説明パネルから)とあるように、出展総数は210件(前後期通じて)です。



    五姓田派は、幕末から明治初期に活躍した絵師集団。「没後100年 五姓田義松 ─ 最後の天才 ─」展(2015年)でも注目を集めました。伝統技法と西洋絵画がミックスした、独特の作風です。

    いわゆる「美術」の範疇に入らない作品が多数展示されているのも本展の特徴です。

    パノラマ館は、日清・日露戦争期に流行した娯楽施設。人形と大壁画を配した仮設小屋で、周囲を見渡して楽しむ趣向。VRのリアル版、といえるでしょうか。

    土産物としての知名度が高い鎌倉彫も、ルーツを辿れば鎌倉仏師。廃仏毀釈により仕事が減少した仏師により広まりました。

    版画の章には地図も。内務省地理局の地図制作に関わった岩橋教章は、元は狩野派の絵師。それを踏まえて見ると、表現としての地図の美しさにも目が留まります。

    展覧会の最後は、明治天皇の肖像がずらり。内田九一による公式の肖像写真を元に、明治天皇を頂点にした近代日本のイメージ発信には、多くの美術家が関わっています。

    美術館ではない神奈川県立歴史博物館だからこそ開催できる、ユニークな展覧会です。美術とともに、幅広い「美術らしきもの」をお楽しみください。

    なお本展は、無料のスマホアプリ「ポケット学芸員」での解説もあります。ナレーションは神奈川県内の高校の放送部員が担当、なかなか聞きやすいガイドでした。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年8月3日 ]

    ※会期中に展示替えがあります(前期:8/4~9/2 後期:9/4~9/30)


     
    会場
    会期
    2018年8月4日(土)~9月30日(日)
    会期終了
    開館時間
    9:30~17:00(入館16:30迄)
    休館日
    月曜日(祝日にあたる9月17日と9月24日は開館)
    住所
    神奈川県横浜市中区南仲通5-60
    電話 045-201-0926
    公式サイト http://ch.kanagawa-museum.jp/
    料金
    一般 900(800)円 / 20歳未満・学生 600(500)円 / 65歳以上 200(150)円 / 高校生 100円

    ※( )内は20名以上の団体料金
    ※中学生以下・障害者手帳をお持ちの方は無料
    ※他の神奈川県立博物館・美術館の有料観覧券の半券提示による割引制度あり
    展覧会詳細 「明治150年記念 真明解・明治美術」 詳細情報
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