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高畑勲展 ― 日本のアニメーションに遺したもの

■アニメーション表現の限りない追及
【会期終了】 1960年代から半世紀にわたり、日本のアニメーションを牽引したアニメーション映画監督・高畑勲(1935-2018)。アニメーションの可能性を追及し続け、他の制作者にも大きな影響を与えました。逝去から1年、その世界を振り返る展覧会が東京国立近代美術館で開催中です。
高畑勲は三重県生まれ。東京大学仏文科を卒業後、東映動画(現・東映アニメーション)に入社。アニメーション演出家として歩み始めます。

初めて演出(監督)した劇場用長編作品は『太陽の王子 ホルスの大冒険』(1968)。大人の鑑賞にたえる壮大なスケールのアニメーションです。

人手がかかるアニメーションは、分業が必須です。その中でも、作品に関わるスタッフが同じ意識をもてるよう、高畑はさまざまな手法を試みました。

会場には、登場人物の人間関係を示した図や、場面ごとの心理状態を示したチャートなど、珍しい資料も展示されています。

この作品で、斬新なイメージを次々に提案して高畑を驚かせたのが、まだ若手だった宮崎駿でした。高畑から「場面設計」という職名を与えられた宮崎は、作品全体に深く関与していきます。



東映動画を退社した高畑が手掛けたのが、『アルプスの少女ハイジ』(1974)をはじめとした、テレビの名作シリーズです。

原作のハイジには宗教的な側面が多く描かれていますが、高畑はスイスの大自然と、そこで営まれる日常の描写に力点をシフト。特別ではない事柄を丹念に描く事で、豊かな人間ドラマをつくりました。

その後は、日本を舞台にした作品へ。『じゃりン子チエ』(1981)では、大阪の人情味あふれる下町を、『火垂るの墓』(1988)では、過酷な境遇の中で懸命に生きた兄弟をいきいきと描いています。

高畑の遺作となったのが『かぐや姫の物語』(2013)。スケッチ風の手描きの線を生かした描法は、背景を描き込んだ従来のセル画様式とは大きく異なります。

「絵が動く」という原初的な感覚を重視し、観客に全てを与えるのではなく、余白を残す事で想像力を刺激する。高畑の集大成といえる作品です。

展覧会の準備過程で見つかった制作ノートなど、貴重な資料も多い展覧会。東京展の後に、来春、岡山県立美術館に巡回します(4/10~5/24)。

なお、高畑自身は絵を描きません。ただ、絵を描かないアニメーション映画監督は大勢いますし、逆に宮崎駿ほど画力がある監督は極めて稀である事も、付け加えておきます。

[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年7月1日 ]

ユリイカ 2018年7月臨時増刊号◎高畑勲の世界ユリイカ 2018年7月臨時増刊号◎高畑勲の世界

高畑勲(著),片渕須直(著)ほか

青土社
¥ 1,728

料金一般当日:1,500円
 → チケットのお求めはお出かけ前にicon

 
会場東京国立近代美術館
開催期間2019年7月2日(火)~10月6日(日)
所在地 東京都千代田区北の丸公園3-1
TEL : 03-5777-8600(ハローダイヤル)
HP : https://takahata-ten.jp
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