IM
    レポート
    endless 山田正亮の絵画
    東京国立近代美術館 | 東京都
    「遅れてきた寵児」の全容
    生涯に5,000点を超える絵画を描いた、山田正亮(やまだまさあき:1929-2010)。画壇とは距離を取りながら郊外で黙々と描き続け、1978年に一躍脚光を浴びて以降は、現代絵画の遅れてきた寵児として高い評価を受けました。初の包括的な回顧展が東京国立近代美術館で始まりました。
    会場
    (左から)《Still Life A.no 11》1949年 / 《Landscape no.8》1948年
    (左から)《Work B.114》1956年 / 《Work B.118》1956年
    (左から)《Work B.183》1958年 / 《Work B.169》1958年
    (左から)《Work C.108》1962年 / 《Work C.138》1963年 / 《Work C.211》1964-65年
    「制作ノート」
    (左から)《Work D.210》1975年 / 《Work D.301》1978年 / 《Work D.259》1977年
    実物を通してアトリエの雰囲気が味わえるスペースは、撮影も可
    (左から)《Work E.250》1986年 / 《Work F.20》1990年
    2005年には府中市美術館でも個展が開催された山田正亮。没してから6年経ちましたが、ロンドンのアートフェア「Frieze Masters」でも個展が開催されるなど、欧米圏でも注目を集めつつあります。

    展覧会は油彩画約200点・紙作品約30点と、個人の作品展としては破格のビッグスケール。会場最後の方は作品が2段掛けになり、壁面を覆い尽くすように作品が並びます。

    会場入口は、画面をほぼ1色で塗り込める「Color」シリーズから。色彩は山田正亮の根源でもあり、最晩年に描いたものですが、あえて冒頭で紹介されています。

    続いて、初期の静物画「Still Life」シリーズ。セザンヌやモランディを彷彿とさせる作品は、写生に基づいた絵画ではなく「記憶から描いた」といいます。



    以後の「Work」シリーズが、山田正亮の核です。1956年から1995年までの作品で、56年~59年がWork B、60~69年がWork C、その後10年がWork Dと、Work Fまで続きました。

    しばしばストライプの画家と称される山田正亮。1960年代のWork Cがそれにあたり、1965年頃までに無数のストライプ作品を描いています。

    ストライプのパターンは一様ではなく、色も幅もさまざま。遠目には均一な模様のようですが、近寄って見ると筆の跡や絵具の垂れ跡などが目にとまります。幾何学的であるが故に、絵画としての生々しさが強く感じられます。

    グリッド状に画面を仕切るスタイルは70年代から。78年の個展で注目を集めてからは、筆のストロークを強調した大画面の作品を描きました。



    展覧会の注目のひとつが、56冊の制作ノート。作品のスケッチや課題についてのメモのほか、チラシに出ている「絵画との契約」など、印象的な言葉も記されています。

    色彩にこだわった山田正亮。本展では最新型の高演色性LED照明が用いられており、山田が追及した色彩をダイレクトに感じてもらえるよう工夫されています。

    会場後半では絵の具や筆のラックなど、制作の裏側も紹介。山田正亮は几帳面な整理魔で、作品を描いている様子を近しい人にも見せませんでしたが、その雰囲気を感じていただけるスペースです。このコーナーのみ、写真撮影が可能です。



    実は山田正亮は、1990年頃までの出版物に「東京大学文学部中退」と記載されていました。今でもネット上にその経歴が散見されますが、現在では否定されています。また、作品の制作年代を偽って発表していたと批判された事もありますが、これについては公式図録で「具体性のない噂話レベル」と結論づけられました。

    40歳を目前にして、急に光が当たった山田正亮。状況の激変は周囲も巻き込んで、虚実が入り組んだ混乱を生んだのかもしれません。いずれにしても、注目に値する展覧会である事だけは、間違いありません。東京展は2月12日まで、続いて京都国立近代美術館に巡回します。(2017年3月1日~4月9日)

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年12月5日 ]

    endless 山田正亮の絵画endless 山田正亮の絵画

     

    美術出版社
    ¥ 2,916


    ■endless 山田正亮の絵画 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2016年12月6日(火)~2017年2月12日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:00(入館は16:30まで)
    ※金曜・土曜は20:00まで開館(入館は19:30まで)
    休館日
    月曜日(1月2日、9日は開館)、年末年始(12月28日[水]-2017年1月1日[日・祝])、1月10日[火]
    住所
    東京都千代田区北の丸公園3-1
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    03-5777-8600 (ハローダイヤル)
    公式サイト http://www.momat.go.jp/am/exhibition/yamadamasaaki/
    料金
    一般  1,000(800)円
    大学生 500(400)円
    *( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。
    *高校生以下および18歳未満、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。それぞれ入館の際、学生証等の年齢のわかるもの、障害者手帳等をご提示ください。
    *キャンパスメンバーズ加入校の学生・教職員は学生証または教職員証の提示で団体料金でご観覧いただけます。
    展覧会詳細 「endless 山田正亮の絵画」 詳細情報
    おすすめレポート
    学芸員募集
    地域おこし協力隊(文化財調査・活用促進員)募集します! [小坂町郷土館博物館]
    秋田県
    ポーラ美術館 学芸員及びエデュケーター募集 [ポーラ美術館]
    神奈川県
    肥後の里山ギャラリーの企画・運営担当者(学芸員) [肥後銀行本店 肥後の里山ギャラリー]
    熊本県
    野球殿堂博物館 正規職員(学芸員)募集の件 [公益財団法人野球殿堂博物館]
    東京都
    若松城天守閣郷土博物館 学芸員募集 [若松城天守閣郷土博物館]
    福島県
    展覧会ランキング
    1
    東京都美術館 | 東京都
    ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢
    開催中[あと64日]
    2025年9月12日(金)〜12月21日(日)
    2
    上野の森美術館 | 東京都
    「正倉院 THE SHOW -感じる。いま、ここにある奇跡-」
    開催中[あと22日]
    2025年9月20日(土)〜11月9日(日)
    3
    出羽桜美術館 | 山形県
    没後40年 有元利夫 優美な絵画世界への誘い
    開催中[あと50日]
    2025年9月5日(金)〜12月7日(日)
    4
    東京国立博物館 | 東京都
    特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」
    開催中[あと43日]
    2025年9月9日(火)〜11月30日(日)
    5
    国立西洋美術館 | 東京都
    オルセー美術館所蔵 印象派ー室内をめぐる物語
    開催まであと7日
    2025年10月25日(土)〜2026年2月15日(日)