IM
    レポート
    [特別展]没後50年記念 川端龍子 ―超ド級の日本画―
    山種美術館 | 東京都
    多様に変化する大胆な日本画
    大正から昭和にかけて活躍した日本画家、川端龍子。龍子は「たつこ」ではなく「りゅうし」と読み、女性ではなく男性です。日本画愛好家の方はご存知かもしれませんが、初めて作品を見る方も少なくないのでは。久しぶりの回顧展が山種美術館で開催中です。
    《草の実》1931(昭和6)年 大田区立龍子記念館
    《鶴鼎図》1935(昭和10)年 山種美術館
    《鳴門》1929(昭和4)年 山種美術館
    左から)《請雨曼荼羅》1929(昭和4)年 大田区立龍子記念館、《香炉峰》1939(昭和14)年 大田区立龍子記念館
    左から)《爆弾散華》1945(昭和20)年 大田区立龍子記念館、《羽衣》1935(昭和10)年 山種美術館
    左から)《百子図》1949(昭和24)年 大田区立龍子記念館、《五鱗》1939(昭和14)年 山種美術館(前期展示)
    左から)《十一面観音》1958(昭和33)年 大田区立龍子記念館、《花下独酌》1960(昭和35)年 大田区立龍子記念館
    《龍巻》1933(昭和8)年 大田区立龍子記念館
    《夢》1951(昭和26)年 大田区立龍子記念館
    川端龍子は1885年生まれ。画家としての初期は洋画を描いており、生活の為に本や雑誌の挿絵なども描きました。洋画家としてはなかなか芽が出ず日本画に転向しますが、後の作品に洋画の影響は色濃く見られます。

    本展では教師からの評価が書きこまれた学生時代の作品や、挿絵を手がけた雑誌など初期の作品から代表作まで、川端龍子の画業を総覧することができます。


    第1章 龍子誕生―洋画、挿絵、そして日本画―

    龍子の日本画は、従来の「床の間芸術」に対し「会場芸術」と呼ばれ、批判されました。その名の通り、龍子の作品は従来の日本画の概念を超えた、大胆さを持っています。

    《鳴門》は、荒々しい鳴門のうずを描いた屏風。高価な群青の絵の具を約3.6キロも使ったという画面を埋め尽す波の表現は力強く圧倒的ですが、龍子はこれを描くにあたって、鳴門の海を一度も見たことはなかったそうです。

    会場一番奥に展示された《香炉峰》は、横幅7mを超える大作。大画面いっぱいに描かれた偵察機、そして中国の雄大な大地を機体を透かして描くウィットにとんだ表現で描かれます。乗り込むパイロットは龍子自身。従軍画家として取材した際の体験が元になっています。


    《鳴門》1929(昭和4)年 、《香炉峰》1939(昭和14)年

    濃紺地に金で描かれた草花が美しい《草の実》は、奈良から平安時代に作られた紺紙金泥経を参考にした作品です。近付いて見ると、勢いのよい筆遣いで描かれたススキの葉の表現に目を奪われます。

    《爆弾散華》は、終戦直後に描かれた作品。龍子の自宅は空襲で被弾、龍子は無事でしたが、使用人2人が亡くなりました。吹き飛ぶ野菜と散らされた金箔は、戦争で散った命を象徴的に描いています。

    昭和8年に描かれた《龍巻》の大画面にリアルに描かれたさかさまの海の生き物たちは、まさに龍巻に巻き上げられた姿です。国際情勢の緊張を、海の姿を通して描いた4連作の1作目で、下絵段階では、上下は逆さまだったそう。


    《草の実》1931(昭和6)年、《爆弾散華》1945(昭和20)年 、《龍巻》1933(昭和8)年

    展覧会を一巡すると、この作品すべて同じ人が描いたとは信じがたい、と思うほどに多様な作品群に驚きます。日本画になじみのない方でも、きっとお気に入りに出会えるのではないでしょうか。

    川端龍子を総覧する展覧会は2005年以来、12年ぶり。会期残りわずかとなりました。山種美術館恒例の浴衣割引も実施中です。ぜひお出かけください。
    [ 取材・撮影・文:川田千沙 / 2016年6月24日 ]

    東京美術館案内 (マップル) 東京美術館案内 (マップル)

    昭文社 旅行ガイドブック 編集部

    昭文社
    ¥ 1,296

     
    会場
    会期
    2017年6月24日(土)~8月20日(日) ※会期中、一部展示替え有
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:00(入館16:30まで)
    ※特別展の開館時間は変更になることもあります。
    休館日
    月曜日(但し、7/17(月)は開館、7/18(火)は休館)
    住所
    東京都渋谷区広尾3-12-36
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    03-5777-8600 (ハローダイヤル)
    公式サイト http://www.yamatane-museum.jp/
    料金
    一般1200円(1000円)・大高生900円(800円)・中学生以下無料
    ※( )内は20名以上の団体料金および前売料金。
    ※障がい者手帳、被爆者健康手帳をご提示の方、およびその介助者(1名)は無料。
    展覧会詳細 「[特別展]没後50年記念 川端龍子 ―超ド級の日本画―」 詳細情報
    おすすめレポート
    学芸員募集
    地域おこし協力隊(文化財調査・活用促進員)募集します! [小坂町郷土館博物館]
    秋田県
    ポーラ美術館 学芸員及びエデュケーター募集 [ポーラ美術館]
    神奈川県
    肥後の里山ギャラリーの企画・運営担当者(学芸員) [肥後銀行本店 肥後の里山ギャラリー]
    熊本県
    ムラーボ!(子供向け体験型施設)庶務チーフ 募集! [横浜市西区みなとみらい4丁目3-8(ムラーボ!)]
    神奈川県
    城陽市歴史民俗資料館 古文書・民俗文化財調査員(会計年度任用職員)募集中! [城陽市歴史民俗資料館]
    京都府
    展覧会ランキング
    1
    東京都美術館 | 東京都
    ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢
    開催中[あと61日]
    2025年9月12日(金)〜12月21日(日)
    2
    上野の森美術館 | 東京都
    「正倉院 THE SHOW -感じる。いま、ここにある奇跡-」
    開催中[あと19日]
    2025年9月20日(土)〜11月9日(日)
    3
    出羽桜美術館 | 山形県
    没後40年 有元利夫 優美な絵画世界への誘い
    開催中[あと47日]
    2025年9月5日(金)〜12月7日(日)
    4
    東京国立博物館 | 東京都
    特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」
    開催中[あと40日]
    2025年9月9日(火)〜11月30日(日)
    5
    国立西洋美術館 | 東京都
    オルセー美術館所蔵 印象派ー室内をめぐる物語
    開催まであと4日
    2025年10月25日(土)〜2026年2月15日(日)