紀元前に約3000年も続いた古代エジプト。展覧会は、古代エジプトの支配者であるファラオ(王)を支えた女性たちにスポットを当てた企画です。
古代エジプトで最も有名な女王といえば、クレオパトラ。ローマの英雄を虜にした絶世の美女は最期はヘビの毒で自死したとされ、映画や小説など多くの物語で題材にされました。
会場冒頭のクレオパトラ像も19世紀に作られたもの。横たわる豊満な肉体の美女、右腕には絡みつく毒蛇と、典型的なクレオパトラのイメージです。
ダニエル・デュコマン・ドゥ・ロクレ《クレオパトラ》会場前半では、古代エジプトの女性たちの暮らしなどを紹介。
復元された椅子や寝台、耳飾や指輪などの装身具で、きらびやかな王宮の暮らしをイメージする事ができます。
1章「王(ファラオ)をとりまく女性たち」、2章「華やかな王宮の日々」3章は「美しき王妃と女神」。古代エジプトでは王妃は王とともに葬儀に加わり、世界の秩序を守る役割を担っていました。紀元前1000年頃になると、最高神「アメン神」に仕えた王族の女性たちに「アメン神妻」という称号が与えられるようになります。
アメン神の聖水を捧げている黒い石の彫像は《アメン神妻のスフィンクス》。容器の蓋には、アメン神の聖獣である牡ヒツジの頭がかたどられています。
3章「美しき王妃と女神」展覧会の主役といえる4人の王妃は、4章から登場します。
まずはハトシェプスト。昨年東京都美術館で開催された「
古代エジプト展 女王と女神」でも大きく紹介されました。近隣との交易を進め、国を繁栄させた名君でした。
続いてティイ。アメンヘテプ3世の王妃で、息子であるアメンヘテプ4世を助けました。会場には美しいレリーフが展示されていますが、近年の調査でレリーフが発掘された墓の全貌が明らかになりつつあります。
そして、ネフェルトイティ。都をアマルナに移したアメンヘテプ4世の王妃です。新しい都では、従来のエジプト美術とは異なる写実的な美術が発展しました。
4章「権力をもった王妃たち」展覧会の最後は、いよいよクレオパトラです。
一時期追放されていたクレオパトラを救ったのが、ローマの有力者であるカエサル(シーザー)。後にブルータスに暗殺されるカエサルの胸像とともに、数体のクレオパトラ像が展示されています。
後年に制作された作品と違って、同時代に作られたクレオパトラは意外と普通の顔。その実像は、美貌よりも言動で人々を魅了するカリスマで、多国語を操る才女だったと言われています。
5章「最後の女王クレオパトラ」展覧会にあわせて、東洋館2階3室では「親と子のギャラリー ミイラとエジプトの神々」が開催されており、本物のミイラを見る事ができます(7月22日~9月13日)。こちらもあわせてお楽しみください。
本展は東京展の後、大阪の
国立国際美術館に巡回します(10月10日~12月27日)。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年7月10日 ]■クレオパトラとエジプトの王妃展 に関するツイート