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    レポート
    フィリップス・コレクション展
    三菱一号館美術館 | 東京都
    蒐集の歩みを追体験
    アメリカで近代美術を扱う最初の美術館として開館した、フィリップス・コレクション。ダンカン・フィリップス(1886-1966)が熱心に蒐集、今では米国で最も優れた私立美術館となりました。「コレクターによる蒐集活動」に着目した展覧会が、三菱一号館美術館で開催中です。
    フィンセント・ファン・ゴッホ《アルルの公園の入り口》1888年
    オノレ・ドーミエ《蜂起》1848年以降
    ポール・セザンヌ《ザクロと洋梨のあるショウガ壺》1893年
    アンリ・マティス《サン=ミシェル河岸のアトリエ》1916年
    (左から)エドガー・ドガ《稽古する踊り子》1880年代はじめ-1900年頃 / シャイム・スーティン《嵐の後の下校》1939年頃
    (左から)アメデオ・モディリアーニ《エレナ・パヴォロスキー》1917年 / ドミニク・アングル《水浴の女(小)》1826年
    パウル・クレー《画帖》1937年
    (左から)ポール・ゴーガン《ハム》1889年 / シャイム・スーティン《雉》1926-27年頃
    アルベルト・ジャコメッティ《モニュメンタルな頭部》1960年
    ペンシルベニア州の鉄鋼王を祖父に持つダンカン・フィリップス。大学在学中から芸術に関心を持ち、26歳で初めて絵画を購入しました。フィリップス・メモリアル・アート・ギャラリー(現フィリップス・コレクション)は1918年に創設、1921年に一般公開されました。

    展覧会はフィリップス・コレクションの設立100周年を記念したもの。ダンカンの購入順に作品を紹介するという、ちょっと珍しい趣向で、近代美術を見続けたコレクターの活動を追体験します。

    1章「1910年代後半から1920年代」。ダンカンが初期のコレクションで重視したのは、クールベとドーミエでした。また、ボナールは1925年の展覧会で見て以来、30年近く購入を続けています。

    2章「1928年の蒐集 フィリップスの嗜好形成」。この年はダンカンの好みが強く反映された年で、マネ《スペイン舞踏》、ボナール《棕櫚の木》、セザンヌ《自画像》などを購入。セザンヌ《自画像》は、翌年に開館したMoMAの開館記念展に出品されています。

    3章「1930年代 理想の蒐集品」。キュビスムにおいて、ダンカンはピカソよりもブラックを好みました。特に1920年代のブラックの作品を評価し、立て続けに蒐集。「フランス的センスにあふれている」と評価しています。



    4章「1940年前後の蒐集」。戦乱の時代でも熱心に蒐集を続け、1944年には初めてカンディンスキーを入手。1948年には美術館の名称をフィリップス・ギャラリーに変更しました。

    5章「第二次大戦後」。ダンカンの蒐集は、自らの意思が最優先。そのため、画家の特徴的な画題には、必ずしもこだわりません。例えば、ゴーガンの《ハム》を1951年に入手する一方で、タヒチ時代のゴーガン作品は手放しています。

    6章「ドライヤー・コレクションの受け入れと晩年の蒐集」。蒐集家のキャサリン・ドライヤーと知り合ったのは1941年。ドライヤーの死後、遺品の寄贈を受けました。ただし、受け入れたのは、カンディンスキーやマルクなど17点のみ。なんとブランクーシの彫刻は拒否しています。

    最後は7章「ダンカン・フィリップスの意志」。講演や評論も行うなど、モダン・アートの普及に努めたダンカン。1961年には美術館の名称が現在のフィリップス・コレクションになりました。最終章に展示されているドガとロダンは、ダンカンが没した後にコレクションに加わったものです。

    私邸を美術館として公開したダンカン・フィリップス。小さな部屋が連続する三菱一号館美術館での展覧会は、ダンカンが目指したスタイルに近いかたちといえます。ひとつひとつの作品とじっくりと対話するようにお楽しみください。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年10月16日 ]

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    青い日記帳(監修)

    世界文化社
    ¥ 1,728

    料金一般当日:1,700円
     → チケットのお求めはお出かけ前にicon

     
    会場
    会期
    2018年10月17日(水)~2019年2月11日(月・祝)
    会期終了
    開館時間
    10時~18時 / 金(祝日を除く)のみ10時~20時
    ※10/5より開館時間が変更になりました。
    ※いずれも最終入館は閉館30分前まで
    休館日
    月曜日(ただし、祝日の場合、会期最終週とトークフリーデーの10月29日、11月26日、1月28日は開館)、年末年始
    住所
    東京都千代田区丸の内2-6-2
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト http://mimt.jp/
    料金
    一般 1,700円 / 高校・大学生 1,000円 / 小・中学生 500円

    ※障がい者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名まで半額

    【前売券】※一般のみ
    1,500円(6月28日から販売開始)
    展覧会詳細 フィリップス・コレクション展 詳細情報
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