インターネットミュージアム
美術館・博物館・イベント・展覧会 インターネットミュージアム
  インターネットミュージアム  >  取材レポート  >  闇に刻む光 アジアの木版画運動 1930s-2010s

闇に刻む光 アジアの木版画運動 1930s-2010s

■SNSの先駆け、素朴ゆえのパワー
【会期終了】 最も原始的な印刷で、アマチュアでも作る事ができる木版画。その特性からメッセージを広める手段になり、アジアの近代化に大きな役割を果たしてきた事は、あまり知られていないかもしれません。アジアの木版画を「メディア」として捉えた初めての展覧会が、アーツ前橋で開催中です。
木版画の制作と社会運動が結びついた「木版画運動」。中国では1930年代、日本は1940-50年代、シンガポールは1950-60年代、韓国は1980年代、インドネシアとマレーシアでは2000年以降と、時代はさまざまですが、アジアの各地で発生しました。

時代と範囲が広い事から、展覧会は全10章構成。ここではいくつか絞ってご紹介しましょう。

1章は「1930s 上海:ヨーロッパの木版画、中国で紹介される」。文学者の魯迅はヨーロッパの木版画や画集を収集して、中国で紹介。社会的なテーマを描いたドイツの版画家、ケーテ・コルヴィッツの作品は強い影響を与え、アジアにおける木版画運動は中国から始まります。

3章は「1940s-50s 日本:美術の民主化、中国版画ブーム」。戦後の日本では、中国の木版画がブームに。日本美術会や中日文化研究所は「中国木刻展」を各所で開催しました。その活動は「日本版画運動協会」の結成に繋がり、日本各地に版画サークルが誕生。平和運動や原水爆禁止運動など、市民運動をテーマにした木版画も作られていきます。

4章「1940s-50s ベンガル:土地を奪還せよ」。英国の植民地だったインドで、特に独立運動が盛んだったのがベンガル(現インド東部とバングラデシュ)です。インド共産党に属していた画家たちは、農民運動などをテーマにした版画を作りました。



7章は「1960s-70s ベトナム戦争の時代:国境を超えた共闘」。ベトナム北部のドンホー村では、テト(ベトナムの新年)向けに季節の版画を作る風習がありました。泥沼化するベトナム戦争の中で、伝統的なドンホー版画も政治的なプロパガンダに。子どもをあやす「ホーおじさん」は、もちろんホー・チ・ミンです。

ベトナム戦争では、世界的な広まりを見せた木版画も生まれました。銃と幼児を抱えたベトナム女性の像で、もとは中国の作家による木版画《血が浸み込んだ大地》。反帝国主義・女性解放のアイコンとなり、この図像を採り入れた油彩画がパキスタンで描かれた他、インドネシアや香港、そして欧米でも多くの印刷物に使われました。

9章は「1980s-2000s韓国:高揚する民主化運動」。1980年の光州民衆抗争(光州事件)をきっかけに、民衆美術運動が発展した韓国。ホン・ソンダムによる抗争を描いた版画《五月連作版画〈夜明け〉》が、展示室を一周して並びます。

韓国の民衆美術運動では、大型の掛絵「コルゲクリム」も特徴的です。1987年に大学生が犠牲になった事件を題材にした《ハニョルをよみがえらせろ!》は、原画はハガキサイズの木版画ですが、大型の掛絵になって大学の建物外壁に掲げられました。掛絵は版画を元にして描かれたものですが、注目されるのは、彫刻刀の跡も再現されている事。木版画の荒々しさが、メッセージ性を強調しています。

最後の10章「2000s-インドネシアとマレーシア:自由を求めるDIY精神」には、現在進行形の木版画も。1996年にマイクとボブが結成した「マージナル」は、インドネシアで最も有名なパンク・バンドです。音楽と同時に、版画を含むアートの分野でも活動しており、作品はTシャツになって拡散。権力者の搾取を告発しながら、社会的弱者への支援活動を続けています。

現代のアートシーンでは、美術と社会との接点が問われる事が増えました。本展の作品も、少し前なら「美術」の枠組みに入らなかったでしょう。市民レベルから社会に対して広くメッセージを発信できる事から、展覧会ではこれらの木版画を「SNSの先駆け」としていますが、まさに納得。必ずしも技術的には高くない作品もありますが、逆にその稚拙さこそが最大の魅力です。素朴ゆえのパワーを感じてください。

福岡アジア美術館からの巡回展で、アーツ前橋が最終会場です。都心からでも、さほど遠くはありません。JR前橋駅から徒歩10分です。

[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年2月13日 ]

まっぷる 群馬 草津 伊香保・みなかみ'19まっぷる 群馬 草津 伊香保・みなかみ'19

昭文社 旅行ガイドブック編集部(編集)

昭文社
¥ 602

 
会場アーツ前橋
開催期間2019年2月2日(土)~3月24日(日)
所在地 群馬県前橋市千代田町5-1-16
TEL : 027-230-1144
HP : http://www.artsmaebashi.jp/
展覧会詳細へ 闇に刻む光 アジアの木版画運動 1930s-2010s 詳細情報
取材レポート
東京都美術館「クリムト展 ウィーンと日本
クリムト展
「横手市増田まんが美術館」がリニューアル'
増田まんが美術館
国立新美術館「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」
ウィーン・モダン
東京ステーションギャラリー「ルート・ブリュック 蝶の軌跡」'
ルート・ブリュック
三菱一号館美術館「ラファエル前派の軌跡
ラファエル前派
東京国立博物館「特別展 美を紡ぐ
日本美術の名品
三井記念美術館「鎌倉禅林の美 円覚寺の至宝」'
円覚寺の至宝
東京国立博物館「国宝
国宝 東寺
横須賀美術館「縮小/拡大する美術 センス・オブ・スケール展」'
スケール展
森アーツセンターギャラリー「ムーミン展」
ムーミン展
パナソニック汐留美術館「ギュスターヴ・モロー
モロー展
東京都江戸東京博物館「江戸の街道をゆく」'
江戸の街道をゆく
国立西洋美術館「ル・コルビュジエ 絵画から建築へ
ル・コルビュジエ
横浜美術館「Meet
アートと人と美術館
国立科学博物館「特別展
大哺乳類展2
東京国立近代美術館「福沢一郎展 このどうしようもない世界を笑いとばせ」'
福沢一郎展
サントリー美術館「information
左脳と右脳
あべのハルカス美術館「クマのプーさん展」
[エリアレポート]
クマのプーさん展
練馬区立美術館「くもんの子ども浮世絵コレクション 遊べる浮世絵展」
[エリアレポート]
遊べる浮世絵展
愛知県美術館「アイチアートクロニクル1919-2019」
[エリアレポート]
アイチクロニクル
奈良国立博物館「国宝の殿堂 藤田美術館展 曜変天目茶碗と仏教美術のきらめき」
[エリアレポート]
藤田美術館展
第3回 インターネットミュージアム検定
ミュージアグッズのオンラインショップ ミュコレ
インターネットミュージアム アルバイト募集中
2019年の展覧会予定(東京・名古屋・大阪 近郊)
皇室がご覧になった展覧会 博物館・美術館の情報
テレビでミュージアム 博物館・美術館の情報
エリアレポート(読者による取材記事) 博物館・美術館の情報
ニュース
一覧
東日本大震災・ミュージアム関連情報サイト MUSEUM ACTION
イベント検索ランキング
ギュスターヴ・モロー 展 ー サロメと宿命の女たち ー ハプスブルク展−600年にわたる帝国コレクションの歴史 ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道 特別展 「恐竜博 2019」
特別展「美を紡ぐ 日本美術の名品 ― 雪舟、永徳から光琳、北斎まで ―」 鎌倉禅林の美「円覚寺の至宝」 ムーミン展 六古窯 ― 〈和〉のやきもの
博物館・美術館検索
ミュージアム干支コレクションアワード 干支コレクションアワード「猪」
グランプリは「ペッカリー(ヘソイノシシ)象形土偶」でした
ミュージアムキャラクターアワード2018 ミュージアムキャラクターアワード
2018、グランプリは
「雷切丸くん」でした
人気の展覧会 ブログパーツ アクセス数が多い展覧会を地域別にご紹介、ご自由にどうぞ。
刀剣乱舞(とうらぶ)に登場する刀たち 「刀剣乱舞-ONLINE-」に実装された刀、IM取材分をまとめました。
パートナーサイト 関連リンク集

             

博物館、美術館、展覧会の情報登録
博物館、美術館、展覧会に最適。広告のお問い合わせ
インターネットミュージアムへのお問い合わせ

Copyright(C)1996-2019 Internet Museum Office. All Rights Reserved.
ミュージアム・博物館・美術館の情報サイト[インターネットミュージアム]は、丹青グループが運営しています
協力/ (株)丹青研究所 、編集・制作/ (株)丹青社