IM
    レポート
    オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち
    横浜美術館 | 神奈川県
    21年ぶりの大規模展
    フランスが誇る美の殿堂・オランジュリー美術館から、ルノワール、セザンヌ、マティス、ピカソ、モディリアーニなど、13人の作品・計69点が来日しました。これほどの規模で同館のコレクションが日本で見られるのは、実に21年ぶり。横浜美術館の開館30周年を記念した展覧会です。
    オーギュスト・ルノワール《ピアノを弾く少女たち》1892年頃
    (左から)アンドレ・ドラン《大きな帽子を被るポール・ギヨーム夫人の肖像》1928-29年 / アンドレ・ドラン《ポール・ギヨームの肖像》1919年
    クロード・モネ《アルジャントゥイユ》1875年
    ポール・セザンヌ《りんごとビスケット》1879-80年頃
    アンリ・ルソー《ジュニエ爺さんの二輪馬車》1908年
    アメデオ・モディリアーニ《アントニア》1915年頃
    マリー・ローランサン《牝鹿》1923年
    モーリス・ユトリロ《クリニャンクールの教会》1913-15年
    (左から)シャイム・スーティン《七面鳥》1925年頃 / シャイム・スーティン《牛肉と仔牛の頭》1925年頃

    パリのセーヌ川岸に建つ、オランジュリー美術館。元はチュイルリー宮の庭園に建てられたオレンジ温室を改修したもので、美術館の名前もそれに由来します。


    充実したコレクションの礎を築いたのは、画商のポール・ギヨームです。自動車修理工だったギヨームは、アフリカ彫刻への関心から芸術家と親しく交わるようになり、自ら画廊を開設してコレクターに。ギヨームが亡くなった後は、妻のドメニカがコレクションに手を加え、最終的にはフランス政府に譲渡されました。


    同館の所蔵作品のほとんどは常設展示されており、館外にまとめて貸し出される機会はあまりありません。日本では、1998年に開催された「パリ・オランジュリー美術館展」以来となります。


    展覧会はギヨーム夫妻の肖像で始まった後は、作家別に作品が並びます。順路に沿って、いくつかご紹介しましょう。



    ポール・セザンヌは、20世紀の美術にも大きな影響を与えた、近代絵画の先駆者。《りんごとビスケット》は、セザンヌの傑作のひとつです。セザンヌは「りんごでパリを征服する」と、静物画の復権を目指していました。


    パリの税関の職員で、余暇に絵を描いていたのが、通称「税関吏」ことアンリ・ルソー。素朴派の代表的な画家ですが、自身は「粘り強い作業」によって描いたと語っています。


    本展のメインが、オーギュスト・ルノワール。モネやシスレーらとともに、屋外で絵を描きました。サロンで成功した後は印象派から離れ、後年には伝統的な手法も試しています。


    《ピアノを弾く少女たち》は、最も有名なルノワール作品のひとつです。ルノワールは、同様の構図の油彩画やパステル画を、少なくとも6点は描いています。オルセー美術館蔵の作品も有名ですが、本作のほうが表情が柔らかく見えます。


    ポール・ギヨームの妻、ドメニカが高く評価していた、アンドレ・ドラン。フォーヴィスム(野獣派)の画家ですが、後年には伝統へ回帰しました。フランス絵画の正統な後継者とされ、国際的な名声も獲得しましたが、その力はナチス・ドイツに利用されてしまいます。


    ユトリロは、美術モデル兼画家だったシュザンヌ・ヴァラドンの庶子。アルコール依存の治療の一環としてはじめたのが、絵画でした。モンマルトルの街を描いた作品が有名で、画業の頂点とされる「白の時代」の作品も出展されています。


    展覧会では、当時の美術界にポール・ギヨームと妻ドメニカが与えた影響ついても説明されています。ギヨームはモディリアーニにアトリエを与えるなど、当時は無名だった作家も積極的に支援しています。


    ギヨームは自ら美術館をつくる夢は叶いませんでしたが、その死に際して創設された「ポール・ギヨーム友の会」は、マティス、ピカソ、ドラン、ブラックらが名を連ねるほど。その存在の大きさを物語っています。


    横浜美術館開館30周年の記念展なので、巡回はありません。会期は約4カ月と長めですが、お見逃しなく。


    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年9月20日 ]


    Auguste Renoir(ルノアール) (ちいさな美術館シリーズ)Auguste Renoir(ルノアール) (ちいさな美術館シリーズ)

    (著)オーギュスト・ルノワール

    青幻舎
    ¥ 1,296

    会場
    会期
    2019年9月21日(土)~2020年1月13日(月・祝)
    会期終了
    開館時間
    10:00~18:00
    (入館は閉館の30分前まで)
    休館日
    木曜日(12月26日は開館)、12月28日(土)〜1月2日(木)
    住所
    神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト http://yokohama.art.museum/
    料金
    一般 1,700(1,500/1,600)円 / 大学・高校生 1,200(1,000/1,100)円 / 中学生 700(500/600)円 / 小学生以下 無料

    ※( )内は前売/有料20名以上の団体料金(要事前予約、美術館券売所のみ販売)
    ※65歳以上の当日料金は1,600円(要証明、美術館券売所のみ販売)
    ※障がい者手帳をお持ちの方と介護の方1名は無料
    ※前売券は6月1日(土)から販売開始。販売場所など詳細は5月下旬までに展覧会サイトで公開予定。
    展覧会詳細 オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち 詳細情報
    おすすめレポート
    学芸員募集
    【公益財団法人ポーラ伝統文化振興財団】学芸員募集 [ポーラ伝統文化振興財団(品川区西五反田)141-0031 東京都品川区西五反田2-2-10 ポーラ五反田第二ビル]
    東京都
    丸沼芸術の森 運営スタッフ募集中! [丸沼芸術の森]
    埼玉県
    八尾市歴史民俗資料館 学芸員募集中! [八尾市歴史民俗資料館での学芸員職]
    大阪府
    大学内博物館での学芸員募集! [早稲田大学演劇博物館]
    東京都
    城陽市歴史民俗資料館 学芸員(会計年度任用職員)募集中! [城陽市歴史民俗資料館]
    京都府
    展覧会ランキング
    1
    SOMPO美術館 | 東京都
    北欧の神秘 ― ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画
    開催まであと4日
    2024年3月23日(土)〜6月9日(日)
    2
    東京ドームシティ Gallery AaMo(ギャラリー アーモ) | 東京都
    逆境回顧録 大カイジ展
    開催中[あと54日]
    2024年3月16日(土)〜5月12日(日)
    3
    東京都美術館 | 東京都
    印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵
    開催中[あと19日]
    2024年1月27日(土)〜4月7日(日)
    4
    東京国立近代美術館 | 東京都
    美術館の春まつり
    開催中[あと19日]
    2024年3月15日(金)〜4月7日(日)
    5
    紅ミュージアム | 東京都
    企画展「ミニチュア愛(らぶ)!」
    開催中[あと19日]
    2024年2月20日(火)〜4月7日(日)