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    レポート
    昭和×東京下町セレナーデ 滝田ゆう展
    弥生美術館 | 東京都
    ほっこりとした色街の姿
    「寺島町奇譚」シリーズなど優しいタッチの作品で知られる漫画家・滝田ゆう(1931~1990)。坊主頭に着流しの風貌でTVに出演する、お茶の間の人気者でもありました。今年は「寺島町奇譚」連載開始からちょうど50年、弥生美術館で大規模な回顧展が開催中です。
    《漫画ルポ 色彩廓続梯 長崎丸山》(展示期間:2/14~2/25)
    《「寺島町奇譚・げんまいぱんのホヤホヤ」原画》
    《絵草紙怨歌考(4) 東京・池袋キャバレーX》 / 《スタンドバーの女》
    《ぼくが少年キヨシだった頃》 / 《お湯屋帰りのすれ違い》
    「貸本少女漫画の習作」
    『カックン親父』
    「月刊漫画ガロ 滝田ゆう特集」 / 《『月刊漫画ガロ』原画》
    「CM・グラビア・エッセイ」
    「遺された日記」
    「ぬけられます」の看板に誘われて路地に入ると、女性が立っていてなかなか抜けられない…。東京下町・向島区の寺島町にあった私娼窟「玉の井」を舞台にした「寺島町奇譚」シリーズは、滝田ゆうの代表作です。ちょうど50年前の1968年から『月刊漫画ガロ』に連載されました。

    玉の井は、滝田ゆうの出身地。スタンドバーを営む義母の元で育った滝田は、空襲で失われたこの街を愛し、「寺島町奇譚」では繊細なタッチで庶民の生活を描きました。

    滝田作品の特徴のひとつが、擬音。「ケーン ケーン(踏切の音)」「シコシコシコシコ(鰹節を削る音)」など、既成概念にとらわれない絶妙な表現が光ります。

    展覧会では「寺島町奇譚」の原画をはじめ、多くの作品を展示。会場全体が「滝田ゆう」ワールドに溢れています。


    会場1階

    この世代の多くの漫画家と同様に、滝田ゆうもデビューは貸本漫画でした。「のらくろ」の作者・田河水泡に師事し、1956年の「なみだの花言葉」で本格的に漫画家として出発。「カックン親父」がヒットしてシリーズ化されるなど、ユーモア漫画で一定の評価を得ますが、貸本漫画は衰退していきます。

    滝田の運命を変えたのが、1964年創刊の『月刊漫画ガロ』。「カムイ伝」(白土三平)、「ねじ式」(つげ義春)など、個性的な作品が揃ったガロで、滝田は1967年から読み切り漫画を発表。何本かの短編漫画で試行錯誤を経た後に、「寺島町奇譚」が生まれました。

    会場には滝田の人柄がしのばれる資料も展示されています。日記で禁酒・禁煙を誓っては挫折、の繰り返し。画材へのこだわりも少なかったようで、子どもたちが使い残した一般的な水彩絵の具を、作品の彩色に使っていました。


    会場2階

    戦後になると玉の井は「赤線」として復活。1958年の売春防止法で消滅するまで繁栄しましたが、滝田が愛した玉の井は、あくまで戦前の姿です。呑み屋を装った売春店「酩酒屋」(‘めいしゅや’ではなく‘めいしや’)のおねえさんは滝田少年に優しく、その原風景が滝田の作品をつくりました。

    滝田ならではの、ほっこりした世界。展覧会は2月14日(水)から後期展が開催中です。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫・静居絵里菜 / 2018年2月16日 ]

    滝田ゆう:昭和×東京下町セレナーデ滝田ゆう:昭和×東京下町セレナーデ

    松本 品子 (編集)

    平凡社
    ¥ 1,836


    ■滝田ゆう に関するツイート


     
    会場
    会期
    2018年1月3日(水)~3月25日(日)
    会期終了
    開館時間
    午前10時00分~午後5時00分(入館は午後4時30分までにお願いします)
    休館日
    月曜日(祝日にあたる場合は翌火曜日)
    住所
    東京都文京区弥生2-4-3
    電話 03-3812-0012
    公式サイト http://www.yayoi-yumeji-museum.jp/yayoi/outline.html
    料金
    一般900円/大・高生800円/中・小生400円
     (竹久夢二美術館もご覧いただけます)
    展覧会詳細 「昭和×東京下町セレナーデ 滝田ゆう展」 詳細情報
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