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    レポート
    三島由紀夫「豊饒の海」のススメ
    鎌倉文学館 | 神奈川県
    「豊饒の海」を、読んでみませんか
    戦後の日本文学界を代表する作家、三島由紀夫(本名:平岡公威 1925-1970)。代表作「豊饒の海」シリーズの第1巻「春の雪」が刊行されてから、今年で50年を迎えます。「豊饒の海」全4巻を紹介する展覧会が、鎌倉文学館で開催中です。
    《「春の雪」連載第1回》雑誌「新潮」昭和40年(1965)9月 新潮社
    (左奥から)《「恋の帆影」パンフレット》昭和39年(1964)日生劇場 / 《創作ノート「大長篇ノオト(尼寺)」》昭和40年(1965)2月頃 山中湖文学の森 三島由紀夫文学館蔵 / 《創作ノート「奔馬」》 山中湖文学の森 三島由紀夫文学館蔵
    (左手前から)《三島由紀夫から澁澤龍彦あてハガキ》昭和41年(1966)7月13日消印 個人蔵 / 《創作ノート「大神神社」》昭和41年(1966)8月ごろ 山中湖文学の森 三島由紀夫文学館蔵 / 《創作ノート「神風連」》昭和41年(1966)8月ごろ 山中湖文学の森 三島由紀夫文学館蔵
    (左手前から)《「波」5月号》昭和45年(1970)5月 新潮社 神奈川近代文学館蔵 / 《図録「三島由紀夫展」》昭和45年(1970)11月 東武百貨店 個人蔵
    松枝清顕と三島由紀夫の後輩がススメる「豊饒の海」コーナー
    (左手前から)《『日露戦役写真帖』第2巻》明治37年(1904)小川一眞出版部 / 《原稿「春の雪」3節》 山中湖文学の森 三島由紀夫文学館蔵
    第2部「豊饒の海」の世界 第1章「春の雪」展示風景
    (右手前)《原稿「天人五衰」30節》 山中湖文学の森 三島由紀夫文学館蔵
    鎌倉文学館 外観
    「豊饒の海」シリーズは、「春の雪」「奔馬」「暁の寺」「天人五衰」の4巻からなる、三島由紀夫の最後の長編小説。タイトルの「豊饒の海」とは、月面にある海の一つ「Mare Foecunditatis」(豊な海)に由来するとされています。

    小説は、十八歳の侯爵家嫡子・松枝清顕と、清顕を想う伯爵家令嬢で幼馴染みの綾倉聡子の悲劇的な恋愛と、清顕の死から始まる輪廻転生の物語です。物語のはじまり、「春の雪」のあらすじを簡単に説明します。

    皇族と婚約した聡子。清顕は彼女が手の届かない「究極の女」と化したことを知ります。禁を犯した逢瀬の末、皇族との婚約を控えていながら、聡子は清顕の子を妊娠。この事実を知り、松枝家と綾倉家の両家は、子を始末し、聡子を予定どおり結婚させようとします。

    しかし、聡子はすべてを捨てて奈良の寺で出家。清顕は病身を押して、聡子が出家した奈良の寺を訪ねますが、遂に会うことは叶わず。旅の疲れから清顕は肺を患い、親友の本多繁邦へ「又、会うぜ」と謎の言葉を残して、20歳でこの世を去ります。

    本展では、直筆の原稿や創作ノートなどを通じて「豊饒の海」の魅力を紹介する企画。作品の魅力を紹介します。タイトルの「ススメ」は、「進め」ではなく「勧め」。今こそ三島畢生の作品「豊饒の海」を完読してみませんか?と、お勧めする意味です。



    展示は2部構成。第1部「「豊饒の海」のススメ」では、創作ノートや手紙などの資料が展示されています。「豊饒の海」の構成のほか、執筆当時の三島について紹介されます。

    会場の鎌倉文学館は、旧前田侯爵家の別邸を鎌倉市から寄贈を受け、昭和60年以来、文学館として活用されていますが、三島も「豊饒の海」の執筆の際、取材のために訪れています。

    昭和40年の夏、三島が訪れた際に書いた《創作ノート「奔馬」》には、「裏山の裏側を北西に当り、大仏見ゆ」とあり、鎌倉大仏と思われる絵が描かれています。この訪問ののち、本館を「春の雪」に登場する松枝侯爵家の別荘「終南別業」のモデルとしました。

    第2部では、全4巻の「豊饒の海」を、巻ごとに紹介。各巻の魅力とともに、登場人物の台詞などを抜き出し、キャプションと展示するなど、読書欲を引き出す仕掛けが施されています。

    目玉は、《原稿「天人五衰」30節》です。前期展示(4/20~5/29)は、レプリカで紹介されていましたが、後期展示(5/30~7/7)からは、三島による直筆の原本が展示されています。

    「豊饒の海」は、三島由紀夫の遺作。三島は《原稿「天人五衰30節》を机の上にのこし、三島は市ヶ谷の陸上自衛隊駐屯地に向い、演説の後、割腹自殺をする事となります。

    原稿末尾には「「豊饒の海」完。/昭和四五年十一月二十五日」。三島が自決したのも11月25日です。やはり生の原稿を目にすると、三島が命がけで書いた物語の重さを感じます。

    1階展示室入口には、清顕と三島の後輩がススメる「豊饒の海」コーナーが。「豊饒の海」のポイントを、三島が通っていた学習院中等科の3年生(2019年現在)が紹介します。中学生とは思えない、しっかりとした紹介文に思わず唸ります。

    「豊饒の海」を魅力を余すことなく伝える本展。第2部の紹介で完全に本作の魅力に落ちた筆者は、早速「春の雪」を購入したほど。読書欲が刺激される、熱量の高い展示でした。

    [ 取材・撮影・文:静居絵里菜 / 2019年6月5日 ]

    豊饒の海 第一巻 春の雪豊饒の海 第一巻 春の雪

    三島 由紀夫(著)

    新潮社
    ¥ 767

     
    会場
    会期
    2019年4月20日(土)~7月7日(日)
    開館時間
    3月~9月 9:00~17:00(入館は16:30まで)
    10月~2月 9:00~16:30(入館は16:00まで)
    休館日
    6月17日(月)、7月1日(月)
    住所
    神奈川県鎌倉市長谷1-5-3
    電話 0467-23-3911
    公式サイト http://www.kamakurabungaku.com/
    料金
    一般 500(350)円 / 小中学生 200(140)円

    ※( )内は20名以上の団体料金
    展覧会詳細 三島由紀夫「豊饒の海」のススメ 詳細情報
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