あなたも国立国際美術館で“トラベラー”になってみませんか?
1977年10月、万博記念公園にて開館し、今年度で開館40周年を迎える国立国際美術館。
“ホワイト・キューブ”(※)としてスタートした国立国際美術館ですが、求められる役割は時代と共に変化し、美術館の在り方もまた変化してきました。
※ホワイト・キューブ・・・装飾を排した白い壁に囲まれた展示空間のこと。
展覧会タイトルにも掲げられた“トラベラー”とは、新たな表現を探求する作家や、作家の表現方法の変容に伴い、新しい美術館のあり方を模索する学芸員、そして美術館という場で作品や作家との出会いを楽しむ鑑賞者を表しています。
会場には40年という長い年月の間に収集した作品と合わせて、国内外の作家の作品が展示されています。展覧会という旅の途中に“トラベラー”である私たちは何を見つけることができるでしょうか。
地下3階の会場を入ってまず目に入るのはこちらの作品です。
ロバート・ラウシェンバーグ《至点》(1968年)国立国際美術館蔵 ©Robert Rauschenberg Foundation
こちらは、かつてドクメンタ4(1968年)に出品された、ラウシェンバーグの代表作です。
国立国際美術館の旧館がオープンして1年後に収蔵されました。
大変大きい作品であるため、2003年以降は解体された状態で、10年以上保管されていましたが、この度、14年ぶりに修復されました。全体をクリーニングし、新たな照明器具を付け加え、満を持しての公開です。
※作品内での鑑賞は整理券制です。
ヒーメン・チョン《ショート・パフォーミング・ストーリー》(2018年)
こちらは、鑑賞者(参加者)とインストラクターによって成り立つパフォーマンス作品です。
アーティスト、キュレーター、そして小説家であるヒーメン・チョンはこの展覧会で《ショート・パフォーミング・ストーリー》という小説を発表します。
小説の内容を知りたい方は、参加者としてインストラクターから一語一句口頭で物語を教えてもらい、暗記します。
暗記し終えるまでこのパフォーマンスは終わりません。
ちなみに、この小説は今後出版されることはないため、内容を知る事が出来るのは、作家、インストラクターと参加者のみです。
参加してみてはいかがでしょうか(事前予約制)。
続きまして、こちらのパフォーマンスも要チェックです。
アローラ&カルサディーラ《Lifespan》(2014年)国立国際美術館蔵 ©Allora&Calzadilla; Courtesy Lisson Gallery
写真はパフォーマンス風景です。
見にくいかもしれませんが、40億年以上前の冥王代の小さな石を囲うように3人のパフォーマーが口笛と息で交信しています。
天井からつるされた石に3人がランダムに(時には激しく)息を吹きかけ、均衡状態を演出しようとしているかのように見えます。ヴォーカリストの息づかいや、たまに吹かれる口笛に耳を澄ませてみると、そこにはどこかリズムがあるようにも感じました。
家に帰り、図録を確認すると、これはどうやら作曲されたものだったそうです。
ちなみに、パフォーマンスの担い手は、作家本人ではありません。
作家は作品の構成要素として、冥王時代の石と楽譜を用意し、パフォーマーへ指示を出しているのです。
絵画や彫刻と違い、形のないパフォーマンスを“収蔵する”ことは、いまはまだ挑戦的な試みとされていますが、こうした作品が積極的に収集される日はそう遠くないのかもしれません。
最後に展示風景をご紹介します。
こちらは、地下3階にある大竹伸朗の作品展示室です。
郵便物や梱包のための紙を使った作品などが展示されています。
国内外から届く郵便物は何人もの手を経て私たちの手元に届きますよね。
郵便物には「層状の『時間』と『記憶』が張り付いている」と考えた大竹は、それを糊付けしていく際、紙と紙のわずかな隙間に自身のためだけに与えられた瞬間を読み取ったといいます。
そうした「時間の記憶」をぜひ近づいてご覧ください。
会期期間中には、先ほどご紹介した、アローラ&カルサディーラの《Lifespan》のパフォーマンスを含め、たくさんのパフォーマンスをご覧いただけます。
詳細は国立国際美術館のサイトをご覧ください。
エリアレポーターのご紹介
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胤森由梨
美術が大好きなアートライターです。美術鑑賞に関わる仕事を広げていきたいと思っています。現在、instagram「tanemo0417」「artgram1001」でもアート情報を発信中です! ブログ「たねもーのアート録」http://tanemo-art.com/
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