読者
    レポート
    国立国際美術館「トラベラー:まだ見ぬ地を踏むために」
    国立国際美術館 | 大阪府

    国立国際美術館 開館40周年記念展「トラベラー:まだ見ぬ地を踏むために」

    撮影・文 [エリアレポーター]胤森由梨 / 2018年1月20日
    あなたも国立国際美術館で“トラベラー”になってみませんか?

    1977年10月、万博記念公園にて開館し、今年度で開館40周年を迎える国立国際美術館。
    “ホワイト・キューブ”(※)としてスタートした国立国際美術館ですが、求められる役割は時代と共に変化し、美術館の在り方もまた変化してきました。
    ※ホワイト・キューブ・・・装飾を排した白い壁に囲まれた展示空間のこと。

    展覧会タイトルにも掲げられた“トラベラー”とは、新たな表現を探求する作家や、作家の表現方法の変容に伴い、新しい美術館のあり方を模索する学芸員、そして美術館という場で作品や作家との出会いを楽しむ鑑賞者を表しています。

    会場には40年という長い年月の間に収集した作品と合わせて、国内外の作家の作品が展示されています。展覧会という旅の途中に“トラベラー”である私たちは何を見つけることができるでしょうか。

    地下3階の会場を入ってまず目に入るのはこちらの作品です。


    ロバート・ラウシェンバーグ《至点》(1968年)国立国際美術館蔵 ©Robert Rauschenberg Foundation

    こちらは、かつてドクメンタ4(1968年)に出品された、ラウシェンバーグの代表作です。
    国立国際美術館の旧館がオープンして1年後に収蔵されました。

    大変大きい作品であるため、2003年以降は解体された状態で、10年以上保管されていましたが、この度、14年ぶりに修復されました。全体をクリーニングし、新たな照明器具を付け加え、満を持しての公開です。

    ※作品内での鑑賞は整理券制です。


    ヒーメン・チョン《ショート・パフォーミング・ストーリー》(2018年)

    こちらは、鑑賞者(参加者)とインストラクターによって成り立つパフォーマンス作品です。

    アーティスト、キュレーター、そして小説家であるヒーメン・チョンはこの展覧会で《ショート・パフォーミング・ストーリー》という小説を発表します。

    小説の内容を知りたい方は、参加者としてインストラクターから一語一句口頭で物語を教えてもらい、暗記します。
    暗記し終えるまでこのパフォーマンスは終わりません。

    ちなみに、この小説は今後出版されることはないため、内容を知る事が出来るのは、作家、インストラクターと参加者のみです。
    参加してみてはいかがでしょうか(事前予約制)。

    続きまして、こちらのパフォーマンスも要チェックです。


    アローラ&カルサディーラ《Lifespan》(2014年)国立国際美術館蔵 ©Allora&Calzadilla; Courtesy Lisson Gallery

    写真はパフォーマンス風景です。

    見にくいかもしれませんが、40億年以上前の冥王代の小さな石を囲うように3人のパフォーマーが口笛と息で交信しています。

    天井からつるされた石に3人がランダムに(時には激しく)息を吹きかけ、均衡状態を演出しようとしているかのように見えます。ヴォーカリストの息づかいや、たまに吹かれる口笛に耳を澄ませてみると、そこにはどこかリズムがあるようにも感じました。
    家に帰り、図録を確認すると、これはどうやら作曲されたものだったそうです。

    ちなみに、パフォーマンスの担い手は、作家本人ではありません。
    作家は作品の構成要素として、冥王時代の石と楽譜を用意し、パフォーマーへ指示を出しているのです。

    絵画や彫刻と違い、形のないパフォーマンスを“収蔵する”ことは、いまはまだ挑戦的な試みとされていますが、こうした作品が積極的に収集される日はそう遠くないのかもしれません。

    最後に展示風景をご紹介します。



    こちらは、地下3階にある大竹伸朗の作品展示室です。

    郵便物や梱包のための紙を使った作品などが展示されています。
    国内外から届く郵便物は何人もの手を経て私たちの手元に届きますよね。
    郵便物には「層状の『時間』と『記憶』が張り付いている」と考えた大竹は、それを糊付けしていく際、紙と紙のわずかな隙間に自身のためだけに与えられた瞬間を読み取ったといいます。
    そうした「時間の記憶」をぜひ近づいてご覧ください。

    会期期間中には、先ほどご紹介した、アローラ&カルサディーラの《Lifespan》のパフォーマンスを含め、たくさんのパフォーマンスをご覧いただけます。

    詳細は国立国際美術館のサイトをご覧ください。

    会場国立国際美術館
    開催期間2018年1月21日(日)~5月6日(日)
    休館日月曜日、2018年2月13日(火)(2月12日(月・休)は開館)、4月30日(月・休)は開館
    開館時間10:00~17:00、金曜日・土曜日は10:00~20:00(入場は閉館の30分前まで)
    所在地大阪府大阪市北区中之島4-2-55
    06-6447-4680
    HP : http://www.nmao.go.jp/exhibition/2018/40th.html
    料金一般 1,200円、大学生 800円
    展覧会詳細へ 「トラベラー:まだ見ぬ地を踏むために」詳細情報
    エリアレポーターのご紹介
    胤森由梨 胤森由梨
    美術が大好きなアートライターです。美術鑑賞に関わる仕事を広げていきたいと思っています。現在、instagram「tanemo0417」「artgram1001」でもアート情報を発信中です! ブログ「たねもーのアート録」http://tanemo-art.com/

    エリアレポーター募集中!
    あなたの目線でミュージアムや展覧会をレポートしてみませんか?
    エリアレポーター募集中!
    あなたの目線でミュージアムや展覧会をレポートしてみませんか?
    会場
    国立国際美術館
    会期
    2018年1月21日(日)〜5月6日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:00 (入場は16:30まで)
    金曜日・土曜日は20:00まで(入場は19:30まで)

    ※7~9月の金曜・土曜は21:00まで(入場は20:30まで)
    ※開館時間は臨時に変更する場合があります。
    休館日
    月曜日(ただし、2月12日(月・休)は開館し、13日(火)は休館。4月30日(月・休)は開館)
    住所
    〒530-0005 大阪府大阪市北区中之島4-2-55
    電話 06-6447-4680(代)
    公式サイト http://www.nmao.go.jp/exhibition/2018/40th.html
    料金
    一般 1,200 円(900 円) 大学生 800 円(550 円)
    夜間割引料金(対象時間:金曜・土曜の 17:00~20:00)一般 1,000 円 大学生 700 円
    ※無料観覧日:2018年3月31日(土)
    ※心身に障がいのある方とその付添者 1 名無料(証明できるものをご提示願います)
    ※( )内は 20 名以上の団体料金 高校生以下・18 歳未満無料
    展覧会詳細 「開館 40 周年記念展 「トラベラー:まだ見ぬ地を踏むために」」 詳細情報
    おすすめレポート
    学芸員募集
    松山市立子規記念博物館 学芸員募集中! [松山市立子規記念博物館]
    愛媛県
    東山旧岸邸 正社員・契約社員 募集! [東山旧岸邸]
    静岡県
    学芸員(歴史)募集/R8.4.1採用/八戸市役所 [八戸市役所]
    青森県
    東京国立博物館アソシエイトフェロー(博物館教育)募集 [東京国立博物館(台東区上野公園13-9)]
    東京都
    国⽴国際美術館 研究補佐員(教育普及室)募集 [国立美術館]
    大阪府
    展覧会ランキング
    1
    国立西洋美術館 | 東京都
    西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派まで
    開催中[あと28日]
    2025年3月11日(火)〜6月8日(日)
    2
    アーティゾン美術館 | 東京都
    クロード・モネ -風景への問いかけ
    開催まであと272日
    2026年2月7日(土)〜5月24日(日)
    3
    東京国立博物館 | 東京都
    イマーシブシアター 新ジャポニズム ~縄文から浮世絵 そしてアニメへ~
    開催中[あと84日]
    2025年3月25日(火)〜8月3日(日)
    4
    TOKYO NODE | 東京都
    デザインあ展 neo
    開催中[あと135日]
    2025年4月18日(金)〜9月23日(火)
    5
    東京都美術館 | 東京都
    ミロ展
    開催中[あと56日]
    2025年3月1日(土)〜7月6日(日)