横須賀美術館「青山義雄ーきらめく航跡をたどる」
文 [エリアレポーター]
松田佳子 / 2018年3月6日
梅原龍三郎とルノワールとの師弟関係は近年クローズアップされていますが、同じ時代にフランスの巨匠と深い絆があった洋画家がいます。それが、アンリ・マティスに師事した青山義雄です。
1921年、苦学の末パリに渡った青山義雄は「色彩の魔術師」と謳われたアンリ・マティスの目に留まり「この男は色彩を持っている」と称賛されました。
青山義雄《海辺の輪舞》1926年、神奈川県立近代美術館
こちらのように初期の作品は、人や動物たちがプリミティブに描かれ、単純な形が全体にほほえましさを与えます。そして色彩が光や空気感を雄弁に語っているようです。
青山義雄は、各地の海の風景画を多く描いています。
海軍の書記官であった父の仕事の都合で、海のそばで育ったことが影響しているのでしょうか。
青山義雄《南仏アルプス遠望》1954年、石橋財団ブリヂストン美術館
青山義雄の作品は、キャンバスの中に色がたくさん溢れています。
それぞれの色の重なり具合をひとつひとつ間近で見るのも楽しいものですが、少し遠目でみるとその色たちが眼の中で混じりあうことで、物体が質感を伴って現れてくるのを感じるのもまた楽しい観方です。
青山義雄《浦賀水道・春》1992年、横須賀美術館
青山義雄が、幼少期を過ごした横須賀市から見える浦賀水道。
フランスと日本を行き来する暮らしの中で、晩年、観音崎のホテルに滞在し、この場所の風景画を連作しました。
青山義雄《バラ園》1993年、横須賀美術館
こちらはマティスが眠るニースのシミエ修道院にあるバラ園を描いた作品です。
1954年マティスが死去してから、繰り返し訪れては修道院の庭やバラ園を描き続けたことからも、マティスと青山義雄の深い絆を感じることができます。
青山義雄《百歳の自画像》1993年、個人蔵
皆さんのお知り合いの中にもこんなおじいちゃんが一人ぐらい居そうですね。
100歳を過ぎても制作への情熱は衰えず、102歳の長寿を全うしました。
美術館の屋上に上がると、青山義男が見た浦賀水道が目の前に広がります。
画家が見た風景を共有することのできる贅沢なひと時です。
併設レストラン「アクアマーレ」では、企画展コラボデザートとして、「色彩豊かなフルーツのマチェドニア」がいただけます。青山義雄の鮮やかな色彩がよみがえるような美しいデザートです。
その他にも横須賀美術館では、所蔵作品の展示や『週刊新潮』の表紙でもおなじみの谷内六郎館も充実しています。
エリアレポーターのご紹介
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松田佳子
湘南在住の社会人です。子供の頃から亡き父のお供をして出かけた美術館は、私にとって日常のストレスをリセットしてくれる大切な場所です。展覧会を楽しくお伝えできたらと思います。
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