会場風景 ミケランジェロ・ピストレット《ぼろきれのビーナス》
今日着ている服はどのように選びましたか?
京都国立近代美術館で「ドレス・コード?——着る人たちのゲーム」展が開催中です。
約5年に一度、同館と京都服飾文化研究財団(KCI)によって開催される企画展。
ファッションに関する展示というと歴史的変遷やまたはファッションデザイナーにスポットをあてたものが多い中、今回は、着ることを通して社会との関係性を考えてみようというもの。
「毎日服を選び、着る」、それは「見る/見られる」ことでもあり、自分と他者との関係性、社会や特定の文化での立ち位置を暗黙のルールに基づき意識させられます。
わかると頷きつつも、改めて向き合うこととなった時間は新鮮でした。
コムデギャルソン/川久保玲 ドレス
タオ コムデギャルソン/栗原たお コート ビューティフルピープル/熊切秀典 コート、セーター、パンツ、ベルト、サンダル アンリアレイジ/森永邦彦 コート、タイツ、パンプス、サングラス
本展はKCIが所蔵する衣装コレクションや映像、写真作品、インスタレーションなど約300点が13のセクション(コード)に分かれて紹介されています。
「裸で外を歩いてはいけない?」「組織のルールを守らなければならない?」「他人の眼を気にしなければならない?」各セクションに掲げられたタイトルは、そう、全て疑問符なのです。
本展担当の牧口学芸員は「自分の問題として謎解きをするように展覧会をみてほしい。」と話されます。
……1コード進むにつれ、私は着るという行為の奥深さを実感することとなります。
会場風景 ハンス・エイケルブーム《フォト・ノーツ 1992-2019》
特に印象に残ったのはオランダの作家ハンス・エイケルブームの《フォト・ノーツ 1992-2019》です。
彼が、同じ日に同じ場所で通り過ぎる人たちの写真を他人にわからないように撮影した作品が壁一面に並んでいます。
同じロゴのTシャツや鞄を持つ人たち、ピンクのダウンジャケットを着る女性たち。
ほんとに?と思わず言いたくなる光景を前に、おもわず笑ってしまいますが、次の瞬間には自分もそこにいるのではないかと恥ずかしくなっていきました。
自分らしさを出すために服を選んでいても、社会の大きな枠の中での小さなことに過ぎないと実感せざるを得ない反面、同じような「らしさ」が増殖し、社会に新しい枠ができていく。私たち一人一人と社会との関係はなんて面白く絡まっているのでしょうか。
着るという日常的行為は無意識に通り過ごせるものであり、意識すると行きつく先が見えないほどの深さがあります。これは、食べる・寝るといった他の日常行為にも通じるのではないでしょうか。
生きているだけで実は社会と密に繋がっている、生きていくためのヒントは、遠くて高いところばかりにあるものではないとも教えられているようです。
13の問いかけは、予想以上に心の奥に響いていきます。
ルイ・ヴィトン/ニコラ・ジェスキエール 背景には都築響一の写真作品
明日から私は何を選び、何を着るのだろうか…と帰路につき、着古した部屋着でこのレポートを書くのでした。
マームとジプシー《ひびの、A to Z》
エリアレポーターのご紹介
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カワタユカリ
美術館、ギャラリーと飛び回っています。感覚人間なので、直感でふらーと展覧会をみていますが、塵も積もれば山となると思えるようなおもしろい視点で感想をお伝えしていきたいです。どうぞお付き合いお願いいたします。
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