国立科学博物館企画展「風景の科学展 芸術と科学の融合」
文 [エリアレポーター]
nakane / 2019年9月25日
その目的も方法も全く異なる「芸術」と「科学」。
二つを合わせてみたら、どんな世界が見えてくるだろう?
本展は、芸術作品を科学の視点から捉えることで、両者の「融合」を試みる展示です。
会場には、写真家 上田義彦氏が世界中で撮影した風景写真と、国立科学博物館の研究者による解説が並びます。
グレンコー(スコットランド) ©写真 上田義彦
写真に写されたものは何か?
解説によって自然科学の知識を得ると、さっき見た写真の中にも、気づかなかった新たな風景が見えてきます。キャプションひとつひとつを丁寧に読み進めたくなります。
印象深かった写真解説を2点挙げてみます。
1つ目は、イスタンブール[トルコ]の写真にそえられた解説パネル11「航路」です。
イスタンブール(トルコ)の海峡を、波しぶきをあげながら船が進みます。
植物学研究者の解説によると、波しぶきの起こり方には、そこにいるプランクトンの活動も関係するのだそう。
船によって引き起こされた波に、ダイナミックな生命活動が感じられます。
2つ目は、マウイ島[ハワイ]の写真にそえられた解説パネル18「マウイ島のビーチでくつろぐハワイモンクアザラシ」です。
マウイ島(ハワイ)での和やかな光景を捉えた写真ですが、解説でこのアザラシが絶滅の危機に瀕していることが伝えられると、いつか見られなくなってしまうかもしれない貴重な一瞬に思えます。
「融合」のための方法は、テキストだけではありません。
被写体や解説の対象となった動植物の化石や標本、はく製などの実物資料もあり、科学博物館ならではの、見応えのある展示になっています。
また、会場のいちばん奥には、球体状のディスプレイが映像を映し出す「デジタル地球儀」が設置されています。
この地球儀は、大陸プレートが移動する映像などを通して、写真に写された風景の成立過程を、より大きなスケールで視覚的かつ直感的に教えてくれます。
ガンジスカワイルカ頭骨 所蔵:国立科学博物館 ©写真 上田義彦
様々な展示装置によって、風景の歴史的背景や物理的な構造、被写体同士の関係性が浮かび上がるため、多面的に立体的に写真を見るという新鮮な体験が出来ました。
鑑賞後も、「他分野の研究者が見るときは、一体どう見えるだろう?」
「普段目にする景色の中にも、見方を変えると現れる面白い事実があるのでは?」
などと、考えてみたくなる展示でした。
エリアレポーターのご紹介
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nakane
作品自体もそうですが、展示されている空間も好きです。展示風景や雰囲気など、図録や公式HPの記録には残りづらいことを、一ファン目線で捉え、共有出来たらなと思います。
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