新型コロナウイルス感染症の予防・拡大防止のため4月11日の開館予定が延期となっていた弘前れんが倉庫美術館が、ついに7月11日グランドオープンとなり、行って来ました。

吉野町煉瓦倉庫の改修を、建築家の田根剛さんが日本で初めて手掛けるということでも、話題になりました。
今回開催されていたのは、開館記念 春夏プログラム「Thank You Memory ― 醸造から創造へ―」。
美術館にリニューアルした「れんが倉庫」という場所と建物の記憶に注目し、それにまつわる作品が展示されています。
館内に入ってまず出迎えてくれるのは、

奈良美智《A to Z Memorial Dog》(2007) ©Yoshitomo Nara
弘前市出身の奈良美智さんの作品。2006年に煉瓦倉庫で開催された展覧会を支えたボランティアの方々へ感謝の気持ちとして贈られた作品で、外に展示されていたものを館内に迎え再展示。
展覧会内では、自身のルーツをたどる旅の中で撮影されたにた写真作品も展示されています。

ジャン=ミシェル・オトニエル《Untitled(amber,crystal alessandrita necklace)》(2015)
入口付近で透き通るオブジェ。まるでリンゴのような作品から展覧会は始まります。 ここが弘前であることを印象づけられます。
展示室1にはシードル工場であった頃の記憶の作品が散りばめられています。
工場から美術館へと変わっていく様子、改修工事の映像作品やポスターなどが展示されています。

展示風景

笹本晃 ≪スピリッツの3乗≫ (2020)
展示室2に入ると長いアルミのダクトや窓枠にガラス。
当時の工場で使われていたものを使用した作品からは、当時の気配に影も含めて思いを巡らせることが出来ます。
研究室や培養室もあったのですね。ここまでの時点で、すでにシードル工場について詳しくなってきます。

ナウィン・ラワンチャイクン≪いのっちへの手紙≫(2020)
展示室3は、弘前でのリサーチに基づいた作品。
「いのっち」とは、弘前市立博物館が所蔵している縄文時代の猪形土製品の愛称です。作品の形もねぷたから着想を得た扇形と、細部まで弘前に思いを馳せられている作品。

尹秀珍(イン・シウジェン)≪ポータブル・シティ≫シリーズ(2001-)
トランクの中にかわいい街。
このシリーズは、その土地に暮らす人の古着から作られています。なんとこのシリーズの弘前バージョンがこの中にあるのです。弘前市民から100着集まったそうです。

最後の展示室には弘前エクスチェンジ 潘逸舟(ハン・イシュ)の作品。
幼少期に弘前にやってきたことから、《私の芸術が生まれた場所》と題されたプロジェクトが進行中です。
出口を出るとライブラリーがありホッと一息で余韻に浸れます。
また展覧会を観るうちにシードルのことで頭いっぱいになってしまった方、お隣のカフェ・ショップ棟で飲むことも出来ますよ。
弘前駅からお散歩すること15分。ここのためだけに来る価値のある美術館です。
[ 取材・撮影・文:naomiracleart / 2020年7月19日 ]
エリアレポーターのご紹介 | naomiracleart 心踊る作品や体験を求めて美術館や展覧会を巡っています。 作者や展覧会の魅力を伝えられる文章、写真を日々鍛錬中。 インスタグラム [naomiracleart]
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