学芸員が選ぶ おすすめミュージアム

    第34回 佐藤信之(津南町農と縄文の体験実習館 なじょもん 学芸員)

    佐藤信之(津南町農と縄文の体験実習館 なじょもん 学芸員)

    朝日町まいぶんKANの川端さんから、ご紹介をいただきました新潟県津南町農と縄文の体験実習館 なじょもんの佐藤信之です。

    毎年、3~4mもの雪が降り積もる津南町の農と縄文の体験実習館は、文字通り、農に関わることや縄文に関わることを体験実習という五感を通して学んでもらうことを目的として平成16年に開館しました。常設展はなく、春夏秋冬の季節ごとに考古、歴史、民俗、絵画などをテーマにした展示やなじょもん友の会による展示をしています。敷地内には、縄文時代の竪穴住居跡を復元した縄文ムラを再現し、体験会場として活用しています。さらにブナ林があり、自然観察会などの自然体験も行っています。

    体験も春夏秋冬の季節に合わせ、森と共生した縄文文化や本地域の自然や雪国文化を知ることをテーマに自然素材を材料として行っています。その材料の一部は、敷地内の畠で粟、稗、エゴマ、藍、コウゾ、ミトラズ、カラムシなどを栽培しています。この栽培は、作物の展示と種子の保存継承の側面も持ちます。中でも、「アンギン編み体験」は、縄文時代に遡り、民俗学的にも再発見され、製作技術が解明された地であることや、津南町無形文化財に指定された伝承技術であることから特に本館の特徴となっています。保存会によって、敷地内でアンギン編みの素材となる植物である「カラムシ」を栽培、収穫、苧掻き、糸より、編み、雪さらしの行程を全て行っています。

    このほか、本物の火焔型土器を持つ体験や、冬には積雪3mの中をスノーシューで縄文ムラまで歩いて行き、雪に埋もれた竪穴住居跡の中で過ごす体験など、自然環境を生かした様々な体験を開催しています。国道から少し離れ、周囲の明かりや電線がないため、素晴らしい風景や満点の星空を見ることもできます。

    また、苗場山麓ジオパークの拠点施設であり、日本遺産『「なんだ、コレは!」信濃川流域の火焔型土器と雪国の文化』を紹介する施設でもあります。そして、縄文文化を紹介している施設をめぐる「縄文の旅 スタンプラリー」を開催しています。ぜひ、ご覧ください。

    農と縄文の体験実習館 なじょもん 冬の縄文ムラの竪穴住居をスノーシューで訪れる
    農と縄文の体験実習館 なじょもん 冬の縄文ムラの竪穴住居をスノーシューで訪れる




    私のおすすめミュージアム

    阿賀町郷土資料館

    私が紹介するのは、新潟県阿賀町郷土資料館です。

    この資料館は、中学校を活用されていることが特徴的です。

    考古学、歴史、民俗、文化について様々な展示が各教室などを活用して展示されています。

    まずは、玄関を入ると、どこか懐かしい、学校の雰囲気を思い出さられ、「鍾馗様」という藁で作られた人形がお出迎えします。これは、毎年早春で行われる伝統行事で使われ、五穀豊穣、家内安全、無病息災、子孫繁栄、厄除け、厄払いなどを願って作られるものです。

    考古展示室では、学芸員の資料愛を感じさせられる展示が学校の構造をうまく利用して、手作りで展示されています。廊下の壁に埋め込まれたスペースうまく展示スペースとして利用されているところを始めてみたときは大変驚きました。さらに、広い教室にひな壇をつくって、ガラス越しではない、縄文土器を一同に並べている展示は、非常に迫力があります。この展示手法は、本館との共通点で、親近感が湧いています。

    このほか、民俗資料や歴史資料もうまく学校の教室を利用して展示されています。

    同じ新潟県の小さな町の資料館ですが、津南町は長野県境に位置し、阿賀町は福島県境に位置しています。このため、考古資料や民俗資料などに違いがあり、比較してみると大変興味深く見ることができます。そして、類似していることも見つけられます。

    また、地域の子どもたちにも理解できるように工夫されているので、訪れるたびに展示が進化していて、毎回変化を探すのも楽しみの1つです。

    阿賀町郷土資料館 展示室
    阿賀町郷土資料館 展示室

    阿賀町郷土資料館 展示室
    阿賀町郷土資料館 展示室


    [ 第33回 ] 朝日町まいぶんKAN
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