「大正」から「昭和」への改元は1926年12月25日。
翌1927(昭和2)年3月、「昭和」になって初めての春に、東京美術学校(現東京藝術大学)西洋画科を40余名の若者たちが卒業しました。
「上杜会」は、1927年の西洋画科卒業生全員(中途退学者も含む)で結成した級友会です。各自自由な思想を尊重し干渉しない関係性をモットーに活動。
戦前には岡田謙三、山口長男など10名以上がヨーロッパ留学を経験するなど、昭和期終盤まで画家として活躍しました。のちに文化勲章受章者を3名輩出したことも(牛島憲之、小磯良平、荻須高徳)、極めてまれなことです。
戦時中は上杜会から、従軍画家として小磯良平や猪熊弦一郎などが戦地を訪れています。上杜会展は戦後一時期中断しつつもほぼ毎年開催され、1994年まで継続しました。ますます互いの活動を認め合い、また交友や消息を確認する場として、緩やかながら確かにつながっていたのです。
彼らの多くは昭和の始まりとともに画家となり、昭和のさなかに生涯を終えました。当時最もアカデミックな美術教育を受けながら、彼らの画業は千差万別です。それらを俯瞰することで、「昭和」という時代における洋画壇の一様と、画家としての彼らの生きざまが立ち現れます。
「昭和」からすでに31年、平成を隔て昭和に描かれた彼らの作品を改めてみつめることで、本展が令和の時代を見通すヒントとなれば幸いです。