日本ではあまり知られていない斉白石。清時代の同治2(1864)年に生まれ、1957年に没した白石は、清、中華民国、中華人民共和国の3つの時代を生きました。詩、書、画、印という4つの分野に精通し、中国近代絵画の巨匠として親しまれている人物です。
1921年~1929年に計5回開催された「中日聯合絵画展覧会」で、4回にわたって作品を出展。力強い筆線と明るく華やかな色彩が、当時の日本人の心を掴み、好評を博しました。
今回の展覧会では、中国で最も古く大規模な美術アカデミー・北京画院が所蔵する、白石の名品を一堂に紹介。花、魚、蝦などの愛らしい生物と、ユーモラスに描かれた人物画が展示されています。
白石芸術の代表的な画題となる花木。貧農生まれで少年期は病弱だった白石は、力を要する農作業ができませんでした。両親は手工芸を学ばせて一家の生計の足しとすることとし、白石は10代後半から、指物師として働き始めました。
白石は、幼いころから絵を描くことを好みました。梅や竹などの祝賀の伝統文様を用いて、新しい図柄を考案し、称賛の声を浴びました。
故郷・湘潭の郷紳(きょうしん:君主制下の中国で、高い地位を有する人)だった胡沁園に師事。白石、27歳の時でした。胡沁園から、鳥の描写には「活(躍動感)」が大切であると学び、大胆な構図であしらわれた花木に、精緻な筆遣いで鳥獣を描いた作品を多く残しています。
100年近い生涯の晩年は、多くの人に慕われたものでした。中央に展示されている写真では、人々に囲まれている白石の姿を紹介。昔から中国で愛されている人物であることを、うかがわせる一枚です。
本展の後に、
京都国立博物館に巡回(1/30~3/17)。出展内容を一部変更しての展示となります。
※《書斎》以外の写真は、すべて前期展示作品。
[ 取材・撮影・文:静居絵里菜 / 2018年10月29日 ]