言わずと知れた印象派の巨匠、クロード・モネの最初期の作品から晩年までをたどる展覧会。出品作品は、モネが最後まで手元に残したコレクションを引き継いだ、息子のミシェル・モネから遺贈された作品と、初期印象派を評価したド・ベリオ医師のコレクションを中心に構成されています。
会場を入ってすぐ、出迎えるように置かれているのはルノワールが描いたモネの肖像画です。印象派を代表する二人は親しく交流し、若き日にはともにカンヴァスを並べて、一緒に制作することもありました。
1階ではモネが描いた家族の肖像や、若き日の作品が並びます。
1 家族の肖像、4 モティーフの狩人Ⅰモネの画業はカリカチュア(風刺画)作家として始まりました。子供のころからカリカチュアを描いていたモネは、次第に腕を上げ、その売り上げがパリへ行くための費用となりました。
モネは、親しい画家仲間や敬愛する画家の作品を収集し、自宅に飾っていました。戸外制作を勧めたウジェーヌ・ブーダンや、若き日のモネが称賛したドラクロワの作品も、マルモッタン・モネ美術館の貴重なコレクションとして今回展示されています。
3 収集家としてのモネ《印象、日の出》は1874年に開催された「画家、彫刻家、版画家等による共同出資会社」による第1回展覧会で展示されました。その際に、批評家ルイ・ルロワが半ば批判的に「印象派の展覧会」という評論を発表。後にこの展覧会が「第1回印象派展」と呼ばれるようになりました。
この作品への評価が高まったのは、実は最近のこと。1950年代に、この絵こそが印象派の起源だという研究結果が発表されてからです。それ以前には《印象、日の入り》という名で目録に登録されたことがあるというのには驚きます。
クロード・モネ《印象、日の出》1872年 マルモッタン・モネ美術館 東京展展示期間:9月19日~10月18日モネが作りあげた作品としても名高い「ジヴェルニーの庭」は、モネの創作に欠かせない存在です。モネはここで《睡蓮》以外にも多くの作品を描きました。季節ごとに咲く花や、庭に浮かぶ小舟など、モネが見つめた風景を描いた作品を見ることができます。
5 睡蓮と花 ─ジヴェルニーの庭モネは晩年白内障を患いましたが、その創作意欲は衰えることがありませんでした。ジヴェルニーの庭で、太鼓橋やバラの小道など同じモチーフを繰り返し描いています。1923年に3度の手術を行った後、それ以前数年間に描いた作品を破棄していますが、3階で展示される作品は破棄されず、モネが亡くなるまで手元に置いた作品たちです。
衰えたとはいえ、自身で認めた作品は、晩年とは思えないほど力強く濃厚な色彩を見せています。
6 最晩年の作品モネは1914年から睡蓮の連作を描き、生前は一般に公開せず、売却も考えていませんでした。唯一の例外が松方幸次郎。国立西洋美術館の礎となった松方コレクションを作った人物です。モネのアトリエを訪れて直接買い付けた松方を、モネは快く迎えたといいます。上野駅からお帰りになる前に、
国立西洋美術館に立ち寄ってみてはいかがでしょう。
[ 取材・撮影・文:川田千沙 / 2015年9月18日 ]■マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展 に関するツイート