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    レポート
    竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション ― メトロポリタン美術館所蔵
    国立工芸館(東京国立近代美術館工芸館)東京 | 東京都
    世界を魅了する、日本の竹工芸
    メトロポリタン美術館で、一昨年に開催された「Japanese Bamboo Art: The Abbey Collection(日本の竹工芸:アビー・コレクション)」展。47万人以上を動員し、大きな話題となりました。世界が注目する日本近現代の竹工芸を紹介する展覧会が、東京国立近代美術館工芸館で開催中です。
    (手前左から)鳥居一峯《蒼海の渦》平成18年 / 本間一秋《いぶき》昭和43年 / 門田篁玉《維新》昭和56年
    勝城蒼鳳《盛籃 八重桔梗》平成24年
    小菅吼月《晒竹捻り組花籃》昭和51年
    (左から)飯塚琅玕斎《花籃 宝殿》昭和15-19年頃 / 飯塚琅玕斎《花籃 日朗》昭和15-24年頃
    初代田辺竹雲斎《柳里恭式釣置花籃》明治33-大正9年頃
    四代田辺竹雲斎《舟形花籃 出帆》平成27年
    五世早川尚古斎《廣口花籃》昭和40年
    本田聖流《舞》平成12年
    生野徳三《洸》平成5年

    展覧会は、ニューヨークのアビー夫妻が収集した日本の近現代の竹工芸作品「アビー・コレクション」の里帰り展。同コレクションが日本で披露されるのは、今回が初めてです。


    日本では九州から東北まで自生する竹(一部は北海道も)。極めて成長が早く、強靭で弾力性に富む竹は、生活の道具から建築資材まで、古くから幅広く使われてきました。


    日本の竹工芸の水準を広く世界に知らしめたのは、ロサンゼルスの故ロイド・コッツェンです。米国の化粧品大手ニュートロジーナの社長だったコッツェンは、膨大な数の竹工芸を収集。展覧会はアメリカを巡回し、2004年に日本でも紹介されました。


    ダイアン&アーサー・アビー夫妻も、1999年にニューヨークのアジア協会で展示されたコッツェンのコレクションを見て、竹工芸の美しさと優雅さに感激。自らも収集をはじめました。


    「作品収集の基準は作品への愛情」と語るアビー夫妻ですが、そのコレクションには歴史的に重要な作家のほか、第一線で活躍中の気鋭の作家も含まれ、充実した内容は高く評価されています。


    展覧会は、冒頭の展示室でダイジェスト的に主要作品を紹介。次いで、日本における主な竹工芸の生産地である、東日本・西日本・九州と、地域別に作品を展示。途中で現代の竹工芸作品をまとめて見せていきます。



    東日本で竹工芸の近代化を進めたのが、栃木出身の二代飯塚鳳斎(いいづかほうさい)と、その弟の飯塚琅玕斎(ろうかんさい)。大正から昭和初期に展覧会に出展し、竹工芸の「作家」として、その地位を確立させました。


    戦後も東日本からは多くの優れた竹工芸家が生まれ、日展などを舞台に独創的な作品を発表しています。


    一方の西日本。大阪は茶の文化の中心地だったため、花籠や盛籠などの竹製品は鑑賞の対象でした。文人らの支援を受けた籠師は、国内外の博覧会などで活躍しました。


    美術製籠家として自らの創作に銘を刻したのが、初代早川尚古斎(はやかわしょうこさい)。初代田辺竹雲斎(たなべちくうんさい)は、竹工芸の近代化を進めました。


    九州は、大分・別府が竹工芸の産地。優良な竹材を背景に、名工が活躍しました。生野祥雲斎(しょうのしょううんさい)は、大戦を挟んだ時期に竹工芸作家として一時代を築き、1967年に竹工芸初の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。


    展覧会は大分・東京・大阪とまわる巡回展。アビー・コレクションだけでなく、それぞれの館が所有する作品もあわせて展示し、竹工芸の造形美を感じてもらう構成です。東京展では工芸館が所有する近代工芸の名品60点も展示されています。


    なお、この後に開催される大阪展(2019年12月21日~2020年4月12日、大阪市立東洋陶磁美術館)では、四代田辺竹雲斎による竹のインスタレーションも設置される予定です。


    伝統工芸の作家でありながら、ダイナミックなインスタレーションも手掛ける四代田辺竹雲斎は、今もっとも注目を集めているアーティストのひとり。展示構成の導入部分に設置されるとの事、こちらも楽しみです。


    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年9月12日 ]


    ※写真の作品は全てアビー・コレクション メトロポリタン美術所蔵

    The Abbey Collection,“Promised Gift of Diane and Arthur Abbey to The Metropolitan Museum of Art.”


    メトロポリタン美術館ガイド 日本語版メトロポリタン美術館ガイド 日本語版

    エリクセン・トランスレーションズ・インク

    メトロポリタン美術館
    ¥ 4,504

    会場
    会期
    2019年9月13日(金)~12月8日(日)
    会期終了
    休館日
    月曜日(ただし、9月16日、9月23日、10月14日、11月4日は開館)、9月17日(火)、9月24日(火)、10月15日(火)、11月5日(火)
    住所
    東京都千代田区北の丸公園1-1
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト https://www.momat.go.jp/
    料金
    一般 900(700)円 / 大学生 500(350)円 / 高校生 300(200)円

    ※中学生以下、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。
    ※( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。
    ※割引・無料には入館の際、学生証・運転免許証など年齢のわかるもの、障害者手帳をご提示ください。
    展覧会詳細 竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション ― メトロポリタン美術館所蔵 詳細情報
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