東京国立博物館で特別展「
台北 國立故宮博物院 -神品至宝-」の開催中(9月15日まで)、今秋には
森美術館で台湾出身の現代美術家リー・ミンウェイ(李明維)の大規模個展(9月20日~2015年1月4日)と、今年は台湾美術の展覧会が目に留まります。
本展は、現在の台湾美術界の中心的な流れを紹介する企画展。台湾美術院は2010年の設立後、中国やオーストラリアで展覧会を行っていますが、日本で大きく紹介されるのは今回が初めてです。
会場早速、何人かの作品をご紹介しましょう。廖修平(1936-)は台湾美術院の発起人の一人で、現在は院長を務める版画家。70年代に現代版画の新技法を携えて米国から帰国し、現在の台湾現代版画界を牽引してきた功労者です。
中国の伝統的な色彩と陰陽五業論をもとにした作品のほか、近年は無数の手を描く「夢堺シリーズ」も手掛けています。
廖修平の作品展覧会チラシの裏面で目にしてから気になっていたのが、林章湖(1955-)。東洋の詩的情緒にあふれる作品を水墨で描きます。
古びた漁船の男たち、激流を遡る小魚。巧みな描写力とともに、味わい深い賛も印象に残ります。
林章湖の作品出展作家のなかで最年少は、林俊良(1968-)。台湾の動植物を題材にした作品などで、数々の賞を受賞しているグラフィックデザイナーです。
地球の大陸の形が鯉の文様になっているユニークな《愛・地球》など、鮮やかな青色の作品が2点並びます。
林俊良の作品展覧会では台湾美術院院士20名の作品のほか、賛助出品として2名の作品も紹介されています。ひとりは、文人画に民間芸術の「雅・俗」を取り入れ、台湾では名高い書画家の鄭善禧(1932-)。そしてもうひとりは、歌手としても有名なジュディ・オング倩玉(1950-)です。
日展でも何度も入選しているジュディ・オング倩玉。本展でも評価が高い情緒豊かな木版風景画が紹介されています。
ジュディ・オング倩玉の作品関連イベントとして8月30日(土)には台湾映画の上映、9月7日(日)には中国楽器によるミュージアムコンサートも開催されます。詳しくは
公式サイトでご確認ください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年8月8日 ]■松濤美術館 に関するツイート