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    レポート
    市民からのおくりもの2020―令和元年度 新収蔵品を中心に―
    東京都江戸東京博物館 | 東京都
    江戸博が新収蔵した資料から、厳選した逸品を公開する毎年恒例の展覧会
    白眉は8代将軍徳川吉宗が行った、徳川家康百三十回忌法要の豪華な絵巻
    江戸で琳派を再興した酒井抱一。終の棲家となった「雨華庵」の額なども

    資料の収集と継承は、ミュージアムの責務。東京都江戸東京博物館が新たに収蔵した資料を、一般に公開する恒例の展覧会が、同館の5F企画展示室ではじまりました。


    江戸東京博物館「市民からのおくりもの2020―令和元年度 新収蔵品を中心に―」会場風景
    会場風景


    令和元年度・2年度に加わった収蔵品から、厳選された資料を紹介する本展。会場は時代順の4章構成で、第1章は「将軍家の権威と旗本・豪商」です。

    会場に入って最初に展示されているのは、勝海舟の父、勝小吉の回顧録「夢酔独言」。小吉は幼いころから奔放で素行が悪く、就職もままならなかった事などが、飾らない口語体で綴られています。


    勝小吉 筆《夢酔独言》1843年(天保14)
    勝小吉 筆《夢酔独言》1843年(天保14)


    本展の白眉といえるのが《紅葉山八講法会図巻》です。徳川家康の百三十回忌にあたる1745年(延享2)3月、8代将軍吉宗が江戸城内紅葉山東照宮で行った、華麗な法要の模様を描いた絵巻です。こちらは輪王寺宮門跡公遵親王の輿。あまりに長いので一度ではお見せできませんので、後期は吉宗の輿に巻替えされます。


    《紅葉山八講法会図巻》(部分)江戸中期
    《紅葉山八講法会図巻》(部分)江戸中期


    第2章は「江戸が育てた美と技の世界」です。

    江戸を代表する絵師・文人の酒井抱一(1761~1828)。1809年(文化6)に下谷大塚(現・台東区根岸5丁目付近)に居を移し、「雨華庵」の額を掲げました。1815年(文化12)に尾形光琳の百回忌法要が行われたのも、この雨華庵。琳派を再興した地としても、重要な意味を持っています。


    酒井忠実 書《「雨華庵」額》1817年(文化14)
    酒井忠実 書《「雨華庵」額》1817年(文化14)


    その酒井抱一と、蒔絵師の原羊遊斎のコラボ作品といえるのが《三味線 銘「岸波」》です。抱一が下絵を描き、羊遊斎が蒔絵を施した、豪華なオーダーメイド品です。この三味線には両者の銘が海老尾の裏に記されています。


    酒井抱一 書、原羊遊斎 蒔絵《三味線 銘「岸波」》江戸後期
    酒井抱一 書、原羊遊斎 蒔絵《三味線 銘「岸波」》江戸後期


    第3章は「大東京-発展する都市」。西洋に追いつこうと近代化を進めた日本。その中心として大きく繁栄した東京ですが、1923年(大正12)9月1日の関東大震災で壊滅的な被害を受けました。

    多くの報道機関が機能不全に陥る中、被災を免れた印刷所らは絵葉書を制作。9月10日前後から販売されました。質は高くないものの、情報に飢えていた人々に飛ぶように売れたといわれます。


    《関東大震災絵葉書 焼失後の須田町万世駅 他》1923年(大正12)
    《関東大震災絵葉書 焼失後の須田町万世駅 他》1923年(大正12)


    明治から昭和にかけて活躍した政治家、高橋是清(1854~1936)。内閣総理大臣にも就任していますが、特に大蔵大臣を6度も務めた財政家として高く評価されています。

    「ダルマ宰相」の愛称で親しまれた是清は、とても家族思い。是清の子孫から寄贈された資料の中には、幸せそうな集合写真が目を引きます。軍事予算の抑制を試みたことが恨みを買い、二・二六事件で非業の死を遂げました。


    高橋是清 関連資料
    高橋是清 関連資料


    最後は第4章「首都東京-戦争から復興へ」。1940年(昭和15)に開催が予定されていた東京オリンピック。東京市は招致に際し、東京の街並み、風景、競技場などを収録したアルバムを作成。五輪開催地としての適正を世界にアピールしました。残念ながら日中戦争のために開催は幻に。この資料も海外向けに配布されたため、国内の所蔵例が少ない貴重な資料です。


    《Tokyo Sports Center of the Orient「東洋のスポーツ中心地東京」》1933年(昭和8)
    《Tokyo Sports Center of the Orient「東洋のスポーツ中心地東京」》1933年(昭和8)


    太平洋戦争中は、芸術も国家に利用されています。軍の主導で陸軍美術協会、大日本海洋美術協会が発足。画家たちも「絵筆で国に報いる」を意味する「彩管報国」を合言葉に、積極的に協力しました。一般の国民も、とても多くの人々が展覧会に足を運び、その内容を絶賛した事は忘れてはなりません。


    大日本海洋美術協会 編《大東亜戦争海軍美術》1943年(昭和18)刊 / 陸軍美術協会 編《大東亜戦争陸軍作戦記録画》1943年(昭和18)刊
    大日本海洋美術協会 編《大東亜戦争海軍美術》1943年(昭和18)刊 / 陸軍美術協会 編《大東亜戦争陸軍作戦記録画》1943年(昭和18)刊


    なお「市民からのおくりもの」というタイトルから全てが寄贈品と思われがちですが、寄贈とともに購入したものもあります。今回の《紅葉山八講法会図巻》も購入した資料です。


    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2021年3月8日 ]

    会場風景
    第1章「将軍家の権威と旗本・豪商」
    川村清雄 画《色紙絵 静物(水仙と豆花)》1927年(昭和2)3月
    栄計舎 製造《柱時計(Made in Ocupied Japan)》昭和20年代
    会場
    東京都江戸東京博物館
    会期
    2021年3月9日(火)〜5月9日(日)
    開催中[あと17日]
    開館時間
    午前9時30分~午後5時30分
    ※入館は閉館の30分前まで
    休館日
    月曜日(4月26日、5月3日は開館)
    住所
    〒130-0015 東京都墨田区横網1-4-1
    電話 03-3626-9974(代表)
    公式サイト https://www.edo-tokyo-museum.or.jp/
    料金
    一般 600円 / 大学生・専門学校生 480円 / 中学生(都外)・高校生・65歳以上 300円 / 中学生(都内)・小学生 無料
    展覧会詳細 市民からのおくりもの2020―令和元年度 新収蔵品を中心に― 詳細情報

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